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1場面物語---星繋ぎ
「片道なんですよ」
彼は丁寧に星を糸で繋ぎながらそう言った。
「片道なんですか?」
私はどうしてそうなったのか、酷くこんがらがった糸に苦戦しながら聞き返した。彼は「そうなんですよ」と小さく微笑んだあと私の手から先程より更に酷くこんがらがった糸を取り上げ魔法のようにスルスルと解いていく。
はいどうぞ、と渡された一本の糸は嬉しそうにキラキラと輝いた。
私はそんな糸が何となく気に食わなくて、えいえいと指先で突いてやった。糸は迷惑そうにキラキラと輝く。彼はそんな私と糸をしばらく面白そうに見ていたが、また星を繋ぐ作業に戻った。私はほんの少し頬を膨らませたが、気づかれないうちにやめにした。
彼が解いてくれた糸の先を小さな星に繋げる作業にうつる。
朝が来てしまう前に繋げるだけ繋いでおこう。絡まないように、慎重に。
「それで、先輩は何で 星繋ぎ になったんですか?」
チカチカと小さな星が光る。それに優しくて糸をかけて次の星に繋ぐ。星々は点のようで線で繋がっているのだ。そして、その線を繋いでいるのが星繋ぎと呼ばれる私達。星を繋ぐ事がまだまだ苦手な私は彼の流れる様な繋ぎを眺めていた。
「なんでって…星があって、それを繋ぐ線があって…」
私の質問へ星を繋ぐ手は止めずに彼は答えた。
「"そこに僕がいた"から。かな…」
チカチカと小さな星が光る。今日も私達は星と星を繋いでいる。
-------------------------星繋ぎ「先輩と星と私」
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