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1場面物語 途中の茶屋にて

「あーあー獏に会いたいなぁ」
はねた髪を指先で弄りながら、茶屋の長椅子で独りごちる。
季節は巡って、いつの間にやら紅葉も色づく秋になった。
「お前、あいつが寝てまだ一年も経たないんだ。無理だよ」
声がしたので見てみると、奴が隣でいつの間にか団子を頬張っている。
それ私の三色団子なのに…。


獏はそれは美しい女性に変化する。
真っ黒でツヤツヤの髪に、昔の中国のお姫様みたいな衣装が映える。
赤や金の似合う白肌は、もちもちとしているに違いない。この間は触れなかった。


「器は冷やしてないよ」
「当たり前だ、冷えたら死んじまう」
獏は器の中で冬眠している。
その器はいつも温かい。
冷えると死んでしまうそうなので、私は百円均一の保温袋にいれている。
冬眠というよりは夢喰いだけど。
と隣の奴は今度は磯辺餅を食らっている。
その金、誰が払うのよ…。

神気が減ったら此処に戻ってくるのだろうか。
焙じ茶をすする。
こんなに綺麗な紅葉なのに誰も遊んでくれないなんて。
「蛇の神様のところだって行きたい」
「お前ねぇ、そう簡単に行けるかよ」
足をパタパタさせながら、むぅっと口を尖らせる。
「神様が難しいなら、せめて水色の猫のいるアパートの前で遊びたい…」
「そんなんばっかしてたら、お前は戻るのが面倒くさくなるだろう」
隣の奴はズズッと茶をすすっている。
よくその口で茶がすすれるなって思う。
「コンはどっか行ってるし、キラキラちゃんは相変わらず遠いし」
いつもいる訳じゃないんだけど、いてくれてもいいじゃない。
「そいつ等は、自由。お前、約束しか・・しねーから」
「契約は重いから嫌いなのぉ」
我儘かよと言われ、まぁねと応える。

「いいじゃねーか。遊びにくんだろ」
「ちがう。あれは……確かめに来てんの」
「でも、かわいいだろ?」
「まぁね。でもさ、きっとコンとかとおなじだよ」
私達は中間地点だから。
「で、あんたは、その食い散らかし分払ってくの?」
私は隣に積まれた皿やなんやらをうんざりした顔で眺める。
「こんだけ紅葉しているんだ。お代はいらねぇだろ」
そういうが早いがドロンっと音のしそうな煙だけが残る。
「んな、アホな…」
やれやれとため息を付く。
払えと言われれば、払うしかないが、まぁいっか。
ハラハラと落ちる紅葉の姿を眺め、一人ぼーっとすることにした。






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