大人の読書感想文-『ゼロK』を読んで思ったこと-
わたしは読書感想文に本の内容と全く関係ないこと書いて注意されるタイプの子どもでした。ちゃんと読んだんだけど飛躍に飛躍を重ね結局何が伝えたいのか自分でもよく分からなくなり、そのまま提出、本当に読んだか疑われます。いや、本当に読んだは読んだんです、正直興味が湧かないような課題本を。それでいろいろ思うところが多すぎてこうなっちゃっただけなんです。
なんだか最近読書をするのにハマりました。正直読書って映像と比べると情報を吸収する効率悪いなと思ってこの2年間くらいあんまり読まなかったのに。例えばある物語を鑑賞するとき本よりも映像の方が登場人物の把握、情景描写、物語の起承転結全てにおいて効率よく内容を吸収できるのは確かです。だからわざわざ効率の悪い方法を選択するなんて正直時間の無駄だと決めつけていました。
でも最近はそうゆう目の前のものから読み解き吸収するような情報処理的な楽しみ方じゃなくて、逆に不完全なものから行間を埋める想像力が必要なんじゃないかと思ってきました。しかもそっちの方が楽しいなって。
なんか好きな漫画とかがアニメ化したり実写化したりするとガッカリするあれって、もちろん配役がビミョーとかストーリー割愛しすぎまたはオリジナルすぎだろとかそういう点もあるけど、こういうところからもきてるんじゃないかなって思います。漫画のコマの間で想像してたことが映像化されると「はいこの状況はこんな感じです」って全部丸見えになっちゃうから逆につまんない、分かんないからこそ想像してワクワクするみたいな。
もちろん映像を否定してるわけじゃなくてそれはそれでめちゃ好きだし、そこは一旦棚に置いといて、本っていうある意味不完全なメディアは面白いなと改めて思ったっていう話です。
最近読んだ中でダントツに面白かったドン・デリーロの『ゼロK』。2016年作品で今年の6月に日本語訳初版が刊行されたみたい。言わずもがな年末にアダムドライバー主演で映画化もされてた『ホワイト・ノイズ』の著者ドン・デリーロの作品。個人的に『ゼロK』の方が『ホワイト・ノイズ』より好きでした。
本の概要は上のリンクから飛べるのでそこを興味がある方は読んで欲しいです。というかわたしがまとめようとすると全然まとまらないから人の引用させてもらったのですが、この本の本筋のテーマは人間の生と死にあります。わたしは人間の生と死を語る上で必要不可欠な「大切な人との離別」というテーマに惹かれました。テクノロジーの進歩によって人間は死を超えることは可能なのか、また死を超えた先の生に何が待っているのか。
この物語の主要登場人物は、主人公、主人公の父、そして主人公の義理の母親であり現在の父親の妻であるアーティス。物語はアーティスが病に犯されこれ以上病状が回復する見込みがないことから、一時的に身体を仮死状態で保存することを決心し、父と息子がその施設に向かうところから始まります。発想的にはブラックジャックの「未来への贈り物」とおんなじですね。
で、妻アーティスが仮死状態になる準備をするときになって、父親が「俺も一緒に行く」と言い出すんです。
本の中でも触れられているけれど私も個人的に「死」がなくなったら「生きること」に対する価値が無意味になるのではないかと思います。人間は絶対最後に死ぬから、その存在が無に帰することが決定づけられているから、生きている間に自分が生きた痕跡を残そうとするのが本能なのではないでしょうか。動物は子孫を残すと言うのが本能的に最優先事項になってるけど、人間は生きてるあいだ何をすべきか、何をしたいか、どんな人を愛するのか考えるのじゃないかな。その中で子孫を残す=子どもをもうけるという選択をする人もいるし、しない人もいる。誰かと愛を分かち合ったり、芸術作品を後世に残したり、誰もまだ見ていない科学技術の最先端を見ようとする人もいる。つまりは人間は自分で考えてその時々で「選択」していて、その「選択」の集積がその人の人生ではないかなと思うんです。
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