月を愛でるその時も
ぶ厚い雲が太陽に照らされる月を覆う。
まるで、私のこころみたいだ。
あちらで彼は、この月を見上げているだろうか。
🌙
読みとりにづらい日本語の文章は刹那の感覚と想いを纏う。
丁寧で美しいその一文。
織り込まれた想いが解かれる瞬間に、
渇ききった喉を潤すように、
あるいは、沁みるように私に染み込む。
私を潤すその感覚と想いは
作者が伝えたかったその感覚と想いに
寄り添うことができているのだろうか。
その思考の瞬間さえも、
日本語の美しさに感じられる。
筆をとるその人が文字に、
言葉にできなかった感覚を日本語は伝えてくれる。
時には、時代を越えて。
🌙
彼は、今日、月が見えないと言った。
雲に、隠れてしまっていると。
それから、街の明かりが明るすぎるとも。
私が見上げる月は、変わらず、
ぶ厚い雲で覆われている。
頬を撫でる風は柔らかくて優しいのに、
月を覆う雲は勢いよく走り、
太陽の光をチラつかせている。
今日は、月が、よく見えないけれど、
とてもきれいだと、私は言った。
🌙
双方が空を見上げて、月を探す時間。
ただ、月を探すだけの時間。
私は、雲がそこにあって良かったのかと、思った。