かっこよくなくったっていいでしょ
「小さい頃は神さまがいて
不思議に夢をかなえてくれた」
テレビからふと流れてきた音楽
あの頃は言葉の奥があるなんて知ることもなく、ただクラスメイトと歌っていたけれど
この言葉の意味と、重みを、感じ取れるくらいには私も歳を重ねてきた
この歌詞には続きがあって
「おとなになっても奇蹟は起こるよ」
きっと、ううん、絶対
そんな意味じゃないことは分かっているけれど、
ああ大人になったら夢がかなうことは奇蹟になっちゃうんだな、なんて、
うん、捻くれてるな
それでも、今の私はもっと前向きに捉えられるほど大人でもない
夢ってなんだろう
走れば走るほど、
大小問わず敵わない夢があることを知って、
無我夢中で辿ってきた跡に、
いくつもの叶わなかった夢がある
夢は大抵かなわなくて、
努力は大抵報われなくて、
そんなことが知りたくてここまで来たわけじゃないんだよ
学生の頃も、もっともっと小さい頃も、
世界の中心は私で、
物語の主人公は私で、
大人がいることも、
自分が子どもなことも分かっていながら、
それでも何故か私が私の世界の頂点だった
それなのに、なんでだろう
あの頃より遥かに背丈は伸びたはずなのに、
大人と呼ばれる世界に入ってからは、
自分がちっぽけで、弱くて、情けない
スポットライトは私じゃないと思ってしまう
あの頃は守られていたからなのかな
神様という名のたくさんの大人が私に魔法をかけてくれてたからなのかな
もう神様はいないんだろうか
ぐるぐるぐるぐる
前に進んでるフリをして
一生終わらないメリーゴーランドに乗っている
夢ってなんだ
小さい頃は当たり前のように将来の夢を聞かれて、
当たり前のように答えて、
ちゃんと答えられたら褒めてもらえて
夢って、なんだっけな
ああそうか、こうやって、
いつまでも夢に囚われてるのは
私だ
夢があるのは素敵で、
そこに向かって走っている人はもっと素敵で、
そんな人でありたくて今だって私は走っている
だけど、
夢って別にかっこよくなくったっていい
かっこつけて、夢が選択の妨げになるのは、違う
夢は道標であってゴールじゃないのかもしれない
夢があるから私は走れる
それでも、夢がかなわなくたって人生はきっと楽しい
ひとつの夢以上に人生はずっとずっと長い
この先も夢はかなわないかもしれないし、
努力は報われないかもしれないし、
一生大人にはなれないかもしれない
それでも人生楽しいねって、
こんな風に走ってもいいんだよって、
世界で一番幸せだったよって、
いつかの自分に胸を張れたなら
欲を言えば、
自分の大切な人にかっこいい背中を見せられたなら
それが私のゴールだ