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歴史小説「Two of Us」第2章J-7
~細川忠興父子とガラシャ珠子夫人の生涯~
第2章 明智珠子の御輿入れ~本能寺の変
J-7
延暦寺の焼け残りの跡を、御簾几帳の間から垣間見上げる、明智珠子。
お輿入れ御一行は、不穏な情勢の比叡山麓を、迂回する。
さながら、後世の参勤交代のような〈お輿入れ行列〉は、戦乱の世にあっても、街道を行き来する人々の微笑ましい眼差しさえ、誘っていた。
通りすがりの旅人さえも、足を止めて口々に噂する。
「おお❕あれが明智殿の姫様のお輿入れじゃ」
「どの神輿櫓でございますか❔」
「真ん中の神輿じゃぞ。お顔は視えぬがの。先頭は、細川家の家老松井殿であるぞ」
旅商人とその奉公人の会話。
「さようで。あっしには、二度とお目にかかれぬ豪勢な輿入れ旅でござろう。あれが、明智の珠子様の神輿櫓ぞな❔」
三度笠を被ったまま、旅の素浪人が隣で訊き返す。
「へい。旦那の目利きは間違いござりませぬ。お侍様もよくご存じで」
「いかにも。あっしは三河の郷士浪人であるが、今日びの権勢を誇る織田の信長殿が媒酌人をなさったとか。
その随一の家臣、明智十兵衛光秀殿の、三女珠子様の御名くらいは、存じておりまっさ」
『武将の姫君』コアオタクである廻船問屋主人と、立ち話を始めたのは、永らく三河駿府を離れ、何をしていたか皆目消息分からぬままの、本多正信。尾張より東の現在を様子見に戻ろうとしている所である。
「さようでござりますか、お侍様。
旦那。上方へ戻る道すがら、ちょっと長岡まで跡を付けてみたいとは、思われませぬか❔」
「おい、コラ❕奉公人の分際で何云うか❕はしたない。
これから谷町四丁目へ戻れば、また日を改めて御用聞きにでも、お伺いしようではないかい⁈」
「そこもとも、明智の姫君には興味津々なんで❔」
「でしょうな、正に。天下の明智の〈別嬪さま〉が、細川の血気盛んな〈暴れ若〉へ嫁ぐとあれば、用が無くとも勝竜寺城の神足(かみたり)まで、往来したいものです。なっ❔吉松❔」
「・・・へい」
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