歴史小説「Two of Us」第4章J‐8
割引あり
~細川忠興&ガラシャ珠子夫妻の生涯~
第4章 Foward to〈HINOKUNI〉Country
J‐8
桂川から保津川へそして分水嶺を越えると、現在の〈由良川〉として、日本海へ向けた一級河川となって行く。
その分水嶺を越えた福知山盆地の手前、〈水戸野〉の峠に辿り着いた。
本能寺の変後、細川珠子とお長が幽閉されていた山あい。その民家で、次男の興秋(興の丸)と次女の多羅が生まれ、物心つくまで育っている。
現在は空き家になっていたが、誰かが住んでいるように整えられていた。
オクが口を開く。
「今夜は、ここに一泊いたしましょう。3名で」
「ありがとう。これならば、また住む事も出来ますね❓」
「お方様。申し訳ないですが、もう伝令は走っています。
この民家を管理していてくださった権兵衛さんが、山家藩のご家老さまに、昨夜伝えに走りました。折り返し戻れば、これからの住まいに案内するそうです」
「まことに、有難いです。さようでしたか。
オク。権兵衛さんとは、あの便利屋さんの〈ごんべえさん〉ですね❓」
「はい、さようです。物部藩や山家藩で御用を授かって、遠く上方や九州までお仕事に出かけられるそうです」
「とても活発な方なんですねぇ❓」
「はい。何でもなさいます」
「何でも屋さんなのですね!?」
珠子の眼を丸くした好奇心の在り方に、久しぶりにイトとオクは顔を見合わせて、クスッと笑った。
あやのべ(綾部)の民衆は、江戸末期になっても明治維新の後も、昭和の世界大戦が終結しても、このガラシャ珠子とマリアのその後を、隠し通していた。
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