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雨後のバンブーのこ

 空耳がもとで時間をムダにすることがある。
 先日も、テレビの出演者が「ミサンガ」と言ったのを「ニサンガ」と聞き間違えてしまい、そこから「ニサンガ6」「ニサンガシックス」へと脳内トランスフォームして、ついには、すべての九九をこの形にして言い換えるところまで行ってしまった。
 すべての九九を「ニサンガシックス」形式にしてつぶやくところまでは、誰もがやってしまうことだと思うのだが(やらない?)、オイラの場合、その段階からさらに奥(先?)へと進んで、その中で最も言いやすいものはどれか?という自由研究を始めるところまで行ってしまったのだ。

 原因は明らかに、むかしルー大柴が使ったルー語「藪《やぶ》からスティック(藪から棒)」の影響である。彼が「そんな藪からスティックに言うなよ」と言ったときの、「藪から」と「スティック」のスムーズな接続感と、〈日本のことわざ+英語〉という意外な組み合わせに惹かれたのだ。だから無意識に「藪からスティック」越えを狙おうとしたのだ。
 オイラにとって「藪からスティック」は、それほど大きな存在なのだ。

 話を戻そう。自由研究を始めたオイラは「藪からスティック」に匹敵する「ニサンガシックス」タイプの式を求めて、「1の段」から「9の段」までの式を「インイチガワン」などと声に出しながら、言いやすい式を探ってみた(みんなもやってみようか ♡)。
 その結果、「言いやすかぁ!」と感じた11個の式がこちらだ。

 2×2=4 (ニニンガフォー)
 2×5=10(ニゴテン)
 2×7=14(ニシチフォーティーン)
 2×9=18(ニクエイティーン)
 3×6=18(サブロクエイティーン)
 5×2=10(ゴニテン)
 5×6=30(ゴロクサーティー)
・・・・・・・・・・・・ なめらかさの境界 ・・・・・・・・・・・・
 6×3=18(ロクサンエイティーン)
 6×5=30(ロクゴサーティー)
 7×2=14(シチニフォーティーン)
 9×2=18(クニエイティーン)

 この結果を分析したところ、実社会では「ちょっとどこで役立てていいか分かんない」発音上の法則を見つけたのだが、内容が七面鳥くさい(七面倒くさい?)ので、法則を書いた下のグレー地の部分は飛ばして、「最終的に、」のところから読んでね。

〔法則1〕
答えの数が[4、10、14、18、30]のとき、なめらかに発音できる。

〔法則2〕
〈かけられる数:[×]記号の前〉と〈かける数:[×]記号の後〉の組み合わせを入れ替えただけの式では、〈かけられる数〉が〈かける数〉より小さいとき、なめらかに発音できる。

 例) 2 × 9 = 18・・・なめらか
    9 × 2 = 18・・・めならか

 そして、その境目は5の段である。つまり、2・3・5の段までにある〔法則2〕の式はなめらかに言えるのだ(4の段は[×]記号の後の数字が「3」で〔法則2〕に該当しないので除外)。このことを「フミコの法則」と言う。ホントは「フサコの法則」でも良かったのだが、オイラは文章とマジメなおつき合いをさせてもらっているので、「富美子」(「文子」じゃなかったの?)にさせてもらった。なので、別に「フサ子(昭和初期!)」が嫌いなわけではない。好きでも嫌いでもないのだ。
 さらに検証を進めよう(以下、検証部分は退屈なので省略)。

 最終的に、この11個の式の中で最も言いやすい式を「ニニンガフォー」に決定した。答えが1桁の式の中には「ニイチガトゥー」という強敵もいたが、脳内横審(横綱審議委員会)を開いたところ、やはり「ニニンガフォー」のほうが優勢と判断された。参考までに、審議の際に配られた資料中にあった「フォー」軍と「トゥー」軍の顔ぶれを見ていただこう。

■ 「フォー」軍
 先鋒: フランソワ・トリュフォー
 次鋒: 蓮舫
 中堅: レイザーラモンHG
 副将: エイト・フォー
 大将: 矢沢永吉

■ 「トゥー」軍 
 先鋒: KAT-TUN
 次鋒: タトゥー
 中堅: 納豆
 副将: オードリー春日俊彰
 大将: マツケンサンバⅡ

 いやぁ勝負が拮抗して迷ったけど、「EIKICHI YAZAWA」のロゴが目に入った瞬間、オイラぁ「フォー」軍を選ぶしかなかったよ。だってとんでもない人だよ~、口からいっぱい星を出せるんだもん(アルバム『ゴールドラッシュ』のジャケットを見よ)。

 空耳から2時間以上、訳のわからない自由研究のためにまた時間を浪費してしまった。それなのにまた、ニサンガシックスの「ガシックス」が気になり始めてる。だって「アシックス」より強く地面に食い込みそうなんだ。




※ 雨後のバンブーのこ :
正しくは「雨後の筍」。同じようなことが次々に起こること。


Ⓒ2023  Namio Kotori


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