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石ころのうた (読了)

 One of my favorite authors, 三浦綾子さん。とても正直で真っ直ぐな方。もし知り合いにいたら、私はこの方をとても信頼していたと思う。本当のことしか言わない人だと思うだろう。繊細にそして大胆に。批判的思考を持ちつつも現実を受け入れながら「要するに、生きるということは、押し流されることなのか」と言ってしまう感じは、私自身にも通じるものがあって、胸が苦しくなる。

 以前読んだこの方の「道ありき」という本の中で印象的だったのは、教師としてお国のために死ぬのが名誉だと愛する生徒たちに教えていたのに、ある日(終戦)を境に教科書の文字を子どもたちに墨で消させることになる経験。この中で三浦綾子さんは自信を失い虚無感に襲われたという。
 教える立場として教壇に立つ時、毎日毎回「誰かに言わされることではなく、私が伝えたいことを伝えるのだ」と心の中で誓う様にしているのは、この本のこの箇所を想像してのことだ。自分が正しいと思って教えていたことが、その人たちを不幸に導いていた、それに気付いた時の彼女の気持ちを思うと、気が狂いそうになる。それくらい三浦綾子さんの言葉は心に真っ直ぐ届く。ある人の若い時代の情熱や流されやすさ。誰もが経験するであろう若い時代を、まるで目の前で自分の身に起こっている様なリアリティーで見せるのは、この方の実直な人柄故だと思う。

 読む度にお会いしてみたかった、話してみたかったと思う。良い本だった。そして今この本を手に取った自分に感謝したい。

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心に残った言葉たち(順不動)

●戦争とは、かくも多数の人間を盲にさせ、狂気にさせるものなのである。その恐ろしさを、わたしは、戦争を知らない人たちに、何万遍でもくり返しいいたいのである。あなたもあの時代に生きていたら、この愚かな仲間の一人になっていなかったとはいえないのだ。

●この学校の在り方が、軍国主義の最先端を行っていることに、私は気づかなかった。

●「濫りに人の師となるなかれ」

●「人間が人間を号令で動かすという、その姿勢がきらいなんです。同時に号令で威嚇されて動く人間になってもいけない。自主的に動くのが人間でなければならない、というわけです...」

●国民全体がそれを讃美し、戦争を肯定して疑わぬ心理になって行くのである。そんなバカなことがと、その時代に生きていなかった人は思うだろう。だが「そんなバカなこと」になるのが戦争中の思想統一の恐ろしさなのだ。

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