鷺沼兄弟の巣立ち、そして今後の川崎フロンターレ。その3(どうする?川崎編)
川崎フロンターレの象徴でもあった中村憲剛の引退。
そして下記の記事に書いた鷺沼兄弟(三笘薫、田中碧)の海外移籍。
これだけでも大きな戦力ダウンであるが、ここにきて怪我人が続出し川崎フロンターレは野戦病院状態のような状態だ。
今日現在9/8時点での故障者は以下の通り。
大島僚太(インサイドハーフ)
旗手礼央(インサイドハーフ、右WG、左SB)
塚川孝輝(アンカー)
谷口彰悟(CB)
車屋紳太郎(CB、左SB)
プレミアリーグでは必ず監督などの会見で怪我人の情報を公開するが、Jリーグではなぜか怪我の具合などが公表されない。
サポーターはYouTubeの公開練習で躍起になって怪我した選手が復帰しているかどうかをチェックするしか方法がない。
もう少しJリーグも大雑把でも良いから情報を開示してほしいものだ。
このように野戦病院化した際にはサポーターの精神衛生上よくない。
ルヴァンカップ準々決勝第1戦の浦和レッズ戦は車屋、ジェジエウが負傷交代した中で急遽センターバックを登里をおきしのいだ戦いだった。
そんな中でもなんとかPKによるアウェーゴール1点をとり、1−1の引き分けであった。
しかし9/8のホーム等々力での第2戦、センターバックが山村だけという緊急事態、川崎サポーターはどうなることやらと不安で仕方がなかったであろう。
そんな中、鬼木監督のインタービューである選手がセンターバックを志願しクリア練習をしているということを話していた。
そして、試合当日のメンバー発表の際にその選手がわかったのだ。
なんと静岡学園から今年加入したルーキーの田邉秀斗であった。
大島、長谷川、旗手と静岡学園の後輩である田邊が自らセンターバックを志願したのだ。
鬼木監督は彼の熱い心意気と必死のクリア練習の姿をみて、彼を第2戦浦和戦のセンターバックスタメンの座を託したのだ。
本職をサイドバックとする高卒ルーキーがフロンターレのセンターバックで出場志願するということはよっぽどの強心臓であることの証である。
田邊の身長は180cmあり、178cmの車屋がサイドバックからセンターバックで活躍している背中をみて触発されたことは間違いない。
田邉秀斗は車屋先輩の負傷の穴を自分でカバーできると信じ、車屋も後輩の田邊に色々とアドバイスしたことは想像できる。
試合が始まる直前に田邊がダミアンにハグされていたシーンがこの試合における田邊の立ち位置を表していた。
さすがに試合序盤ではボールを持ちすぎたり、ポジショニングがフラフラしていて、私もハラハラしながら観戦していた。
しかし、登里や山村の声掛けによりシンプルにボールにアタックできるようになってきた。
周りもビルドアップの際には田邊には預けず、守備面だけに集中させるように気遣っていた。
前半の浦和のCBからのロングボールからの失点は右サイドの山村と橘田の間をつくものであり、田邊の責任ではない。
前半をなんとか乗り切った田邊は後半頭からジェジエウに無事にバトンを渡せた。
これは鬼木監督の当初のプランどおりだった采配だろう。
私は田邉秀斗という向上心の塊のようなメンタリティを持った19歳ルーキーに心から賛辞を贈りたい。
川崎フロンターレには登里、山根、車屋という田邊が目指すべき素晴らしいロールモデルがいる。
レンタル移籍などさせないで、フロンターレで彼らの技術を吸収し成長していってほしい。
そして、順調にいけば左右のサイドバックとセンターバックができるハイレベルなポリバレント選手としてパリ五輪代表になれる可能性があるだろう。
一方、試合は前半にダミアンの同点ゴール、後半にCKで山村、シミッチの得点で3−1と引き離すものの、87分にユンカー、アディショナルタイムに槙野に決められアウェーゴール差で敗退した。
ユンカーのゴールは西大吾の素晴らしく柔らかいクロスからソンリョンとジェジエウの不運が重なってしまい、結果としてしょうがない失点であったと思う。
しかし、槙野のCKのこぼれ球の得点は悔やまれるものだった。
鹿島アントラーズのように試合を終わらせるため、相手コーナーフラッグ付近でキープするような俗に言う「鹿島る」ことができなかったのか?
チーム全体で意識はあったと思うが橘田のところでミスがでてしまい、うまくキープできなかった。
しかし橘田を責めることはできない。彼は連戦による肉体的な疲れと慣れない右サイドバックのポジションで思考も疲弊していた。
橘田も1年目であり、まさに新入社員が労働基準法を超える長時間労働と職種違いのセクションで必死に食らい付いている中、身体と頭が朦朧となりながらも即戦力として責務を果たしているような状態だ。
鬼木監督も1点目の岩波からのロングフィードからの失点から即座に小林とダミアンを2トップにして、相手2センターバックにプレスをかけるシステムへ移行させる柔軟な戦術変更はさすがである。
しかし、浦和のロドリゲス監督も2点取るための3枚替えと槙野投入がズバりとハマったあたり相当な勝負師である。
余談になるが、今の日本代表の監督に必要なのはこの2人の監督のような柔軟な戦術変更と賭けに出る采配であることは間違いない。
なんとか中国には勝ったが、この日本人監督の采配にはストレスが溜まるばかりであった。
話を川崎フロンターレに戻す。
私は3兎を追うのは難しいと感じていた。
一番優先順位が低いルヴァン杯はもう忘れて、ACLとJリーグの2冠を目指すことに集中してほしい。
ではどうすればこの状況を乗り切り、アジアとJの栄冠を勝ち取るのか?
ここまでの戦いで見えたこととして4−3−3は三笘ありきのシステムであることがわかってきた。
宮城や長谷川はそれぞれ良いところがあるが、ドリブルで相手をはがす能力は三笘には及ばない。
ポゼッションで攻撃するにしても、先日の福岡戦で敗れた試合のように川崎の2センターバックとアンカーに激しいマークがつくとどうしてもボール保持が難しくなる。
守備時においてもアンカー脇をいつも狙われ、ウイングが長い距離を戻り守備に回らなくてはならない。
今まで勝てていた試合は田中碧のゲームデザイン力と前線においてボールを奪い切る力、そこからのショートカウンターによる三笘の突破力に頼る部分が多大にあった。
相手にも川崎の4−3−3をさんざん研究されて、鬼木監督も従来のやり方を変えていく必要性が出てきた。
最近の試合でみられる4ー2ー3ー1で家長をトップ下におき自由にやらせたほうがボール保持時の攻撃がスムーズにいっている印象がある。
また、シミッチもダブルボランチのほうがしっかりブロックが作れてゲームメイクも安定することがわかった。
怪我人や相手の出方をみて、4−4−2のダミアンと小林の2トップも選択肢の一つであることは間違いない。
鹿島も2019シーズンは小笠原というバンディエラが引退し、守備の要の昌子源がフランスへ行き、シーズン途中にも鈴木優磨や安部裕葵、安西幸輝など主力選手も海外移籍で抜けた。
それに加え、レオ・シルバや三竿健斗、セルジーニョ、犬飼智也と主力が続々と怪我で離脱していた。
そんなボロボロな状態でも、なんとか我慢し続けてJリーグ3位の成績を維持した。
まさに鹿島の常勝軍団のDNAの歴史があるからこその戦いぶりだった。
今のフロンターレは2019シーズンの鹿島ほどのダメージではないと思う。
この状況を乗り切ってこそ本当に強いチームの礎が築かれていくのだと鬼木監督も考えているはずだ。
まずはACLの蔚山戦。
チーム全員でなんとしても勝ちにいってほしい。
いや、今の川崎なら必ずやってくれると確信している。