随筆『物理の散歩道』
先日、実家へ行き、土木技師の父の本棚をあらためて見ていた。
このずらっと並ぶ黒い本は、父が学生の時にバイトで貯めたお金でそろえたという、鹿島出版会のSD選書。土木・建設関係者ならおなじみの古典のような(?)本。
その奥にあるのは『物理の散歩道』という随筆集。父から「面白いよ」と聞いていたが、一度も開いたことはなかった。
そして、今回、この本をちょっと開いてみた。
『はじめに』によると
著者の「ロゲルギスト」というのは、どこかの国の物理学者かと思いきや、なんと、日本人学者6人(当初)のグループの名前だという!
はじめは「壮大な理論体系」をつくるために集まったが、その目論見はつぶれ、毎月夕食を共にしながら雑談する会となる。会の内容は雑談とはいえ、何か1本のすじが通っている。これを雑誌『自然』に連載したのが、この随筆集になったということだ。
知らなかった! 物理学者のおじさま(お兄さま)達が集まって、ああだこうだ議論を楽しんでいるところを想像するだけで、なんかそれ、すごく楽しそうやん! もっと早くこの本を開けばよかった。
そして、随筆のテーマも、満員電車への人の詰め込み方、とか、洋服は二着交替に着たほうがいいか、とか、かなり日常的。
でもその考察は、人を大豆に見立てて満員電車の実験してみたり、洋服については、くりかえし応力や弾性余効が···とか、本格的!
だって物理学者ですから。日常の素朴な疑問を、大まじめに理論的に考えていて笑ってしまう。ちょっとおとぼけ要素もある気がする。
おもしろいやん! この本!
この夏、少しずつ読んでいこう。父が残してくれた宝物だな。
手元にあるこの本は昭和38年初版で、全5冊ある。調べてみると新装版も発売されているらしい。興味のある方、ぜひおすすめ。