エヴリデイとサムデイ 2人だけの読書部①
この高校には読書部がある。
文芸部ではなく、読書部。
わたしはその読書部の顧問。
ここには2人の部員がいる。
翔くんと緑さん。
ここは2人だけの読書部。
これは彼らの日々の語らいの議事録。
翔: デイヴィッド レヴィサン、天才すぎるだろ。
緑:はいでた、翔の天才認定。あんたの天才認定はこのグミより軽い。
翔:緑だっておもしれーって言ってたじゃん。
緑:面白いよ。抜群に面白い。やられたーって感じだよね。
翔:やっぱり天才じゃんよ。
緑:わたしさ、何気にSF作品って初かもなんだけど、あーこういうのもSFかぁって唸ったよ。
翔:めっちゃわかる!普段、いかにカテゴリーに先入観持ってるか思い知ったわ。
緑:毎日違う身体で目覚めるっていうワンアクションでこんな世界描けるって確かに天才かも。
翔:だろ?なんていうか、事細かに説明とかあるわけじゃないけど疑問に持ってることはリアノンなりネイサンとの対話の中で明らかになっていくじゃん?だからか、当事者感っていうのかな、物語の中にいるわけではないし感情移入なんて到底できないんだけど妙に自分事として捉えられるんだよなぁ。
緑:わたしは結構リアノンに感情移入しちゃってたかも。Aを受け入れていれて惹かれていくリアノンはほんとにリアルで。本当に人を愛するってこういうことなのかなぁってなんか不思議な気持ちになった。
翔:人は中身とかよく言うけど、第一印象はやっぱり外見だし毎日外見が変わっても同じ人ってことを信じて恋に落ちてラストは永遠の愛って、ロマンチックすぎるよな。
緑:翔にもロマンチックなんて感じる心があったことの方が驚きだわ。
翔:俺にだってそんな感性はあるっての。性別どころか外見っていう壁も越えた愛って話してたらアホらしいけど、この本ではそれがスッと心に入ってくる。
緑: デイヴィッド レヴィサンって同性愛をテーマにした作品を書いたりしているし人間の多様性を表現する作家だと思うんだけど、これは1つの集大成みたいに感じる。外見っていうアイデンティティを失った人間、むしろ人間なのか?っていう存在のアイデンティティや感情の動きが繊細に大胆に書かれてる。真実の愛とは?本当のアイデンティティとは?っていう大きなテーマの中にLGBTQ+だったりティーン特有の悩みだったりが詰め込まれている。うわ、わたし、めっちゃ語っちゃった。はっず。
翔:緑の語りが止まらないってことはいい本だってことだよな。緑が熱くなる気持ちはめっちゃわかるし。そういう感情の動きとか大きなテーマもだけど、ストーリーとしての引き込み方もうまいよな。ロードムービー的な要素もあるし、ミステリー的な要素もちゃんとあるからどんどん読み進めてしまう。特にサムデイの方は結構ハラハラしたもん。
緑:そうそう。アメリカっていう国の特性を存分に使いつつ、敵なのか味方なのかわからないXを登場させたりAみたいな境遇の人は他にもいるし、なんならAとリアノンみたいではない繋がり方もあるってことが明かされていくのもおもしろかった!サムデイ、なるほどって感じ。
翔:なるほどってどういう意味?
緑:サムデイっていつかとかやがてとかいう意味でしょ?色々な年齢の人が出てくるのはA以外の人もいるってことを示すだけじゃなくて、その人たちはAのいつかとかやがてでもあるし、Aがそのいつかややがてである可能性もある。リアノンだけじゃなく、いつかAはXみたいな邪悪でない同じ境遇の人と出会うことになるかもみたいな意味もあるのかなぁとか。
翔:俺はさ、色々な年齢の人が名前付きで出てくるのはそのどれかがAなんじゃないかって思ったんだよ。緑の感じ方と似ているようでちょっと違うのかな。全てがAかもしれないし、全てがAじゃないかもしれない。でも、Aではないとは言い切れない。サムデイに関しては特に考えてなかったけど、緑の話を聞いてて思ったのは、未来はどんなことも起こり得るってことかな。人生は不確定ないつかの連続。だからしんどい。けど面白い。Aとリアノンが互いに出会ってまるっきり人生は変わったみたいに。
緑:おー、そんな見方もあるのか。どんな解釈も間違いじゃない。そういう懐の深さもいい物語の証だね。わたしと翔がこうして読書部やってんのも不確かないつかの一部だもんね。あー、今日もおもしろかったー!お腹減ったし、帰ろ。
翔:帰りにてっちゃんとこのたこ焼き食ってこうぜ。
顧問:翔くん。一応、登下校中の買い食いは禁止ですよ。
緑:はははは。翔のバーカ。
翔:緑、お前、笑ってないでフォローしろよ。
緑:じゃあ先生、また明日ね。
顧問:事故とやけどには気を付けて帰ってくださいね。
翔:先生、ユーモアありすぎ。
彼らの活動はまだまだ続きます。
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