2017年 60冊目『人手不足なのに なぜ賃金が上がらないのか』
東京大学の玄田有史教授が編者となり21名の錚々たる識者が様々な観点からタイトルの問題を解こうとした大作です。
ざっくりサマライズしてみる。
人で不足になると、各社は賃金を上げないと採用ができなくなる。
よって、賃金が上がる。
大雑把にいうとこれが、一般的な通説。
これが真だとして、人手不足になると賃金はどくれくらい上がるのか?
・失業率1%の変化で賃金0.1%→つまりあまり上がらない。
実際、過去を見ても労働需給と賃金は必ずしも連動していない
しかも正社員に至っては有効求人倍率から見る限り、人手不足には未だ至っていないとも言える。
一方で、そもそも賃金は上がっていないのか?
・賃金引き上げなどに関する調査によると、85.4%が賃上げしたと回答→つまり企業は上げようとしている。
これらを統合すると、賃金は(少しは)上がっているはずであるが、上がっていないように見えるというのが事実のようです。
何が起きているのか?
○高所得者が減って、低所得者増えている。
○役職者が減っている
○高齢者が定年。
○非正規労働者が増えている
○女性の労働参加が増えている
○サービス業従事者が増えている
どれも平均賃金を下げる方向に構成比が変化している。
つまり、
女性、シニア、非正規社員、サービス業従事者、中小企業という相対的低所得者が多いセグメントが増加し、
役職者、高齢者、正規社員、製造業、大企業という相対的高所得者が多いセグメントのの構成比が低下している。
結果、平均所得は下がる方向にベクトルが向く。
一方、企業は新しい構成比で所得を増加させている(上記の85.7%は賃上げと回答)
結果、平均所得は微減となっているように見える。
構成比の変化によるいわゆる構成バイアスが起きている。
また、日本企業は内部労働市場(各企業の賃金体系)と外部労働市場(中途
採用の相場)が分断されている。
つまり、中途採用の相場が変わっても、内部の従業員の賃金体系に及ぼす影響は小さい。
他にもいろいろな意見も学べるので、勉強になります。
▼前回のブックレビューです。