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2017年 79冊目『Beyond Human 超人類の時代へ 今、医療テクノロジーの最先端で』

ショッキングピンクの派手な本で、目立っているので手に取りました。

最先端医療、例えば多数のナノロボットが人間の体の中に入り、細胞の損傷をその場で修復する。

AIと直接つながった脳。これらにより、人生は100歳どころか250歳を超える可能性があるのです。

そのとき、私たち人類に何が起こるのか?

これが、この本のテーマでした。

ビクターの話から、この本はスタートします。

最先端医療のおかげでビクターは250歳です。

しかし、外見は30代にしか見えませんし、本人もそのような気持ちです。

200年前に心臓病を患ったのですが、今は人工心臓のおかげでマラソンもお手の物です。

100年前に糖尿病治療のために人工膵臓を移植しました。

昔の事故で失った片腕の代わりに義手も使っています。

ビクターの片目にはコンタクトレンズが入っていて、ネットにアクセスが可能です。

網膜には消耗した細胞の代わりにチップが埋め込まれて快適です。

彼の体には多数のナノロボットがいます。

それらがビクターの体内をパトロールしながら、病気や老化で傷ついた細胞の修復を行い、DNAの異変やがん細胞をくまなく発見し、退治してくれている。

ビクターは身体が丈夫なだけではなく、頭脳も脳神経インプラントにより明晰です。

脳の機能をエンハンス(増強)したことで、先祖の誰よりも賢くなれた。

情報はネットにアクセスし、決断は各種テクノロジーがサポートしてくれる。

もともとビクターは自然死の尊厳を守る団体を主催していた。

上述の各種テクノロジーを受けずに、自然に死んでいくことの重要性を広めていた。

ところが、自分の孫が生まれる直前に大病が発覚し、葛藤の末に最先端医療を受け入れた。

そのおかげで、初孫やその後の孫たちとも楽しい時間を過ごせた。

しかし、人生楽しいことばかりではなかった。

彼の大切な家族が何人も、寿命テクノロジーを利用できなかったり、しなかったりして亡くなっている。

彼自身もテクノロジーの進歩で何度も仕事を奪われたし、何度かの結婚も40年ほどで破たんに終わった。

特に、最初の妻のイレインは生涯最愛の人だった。

彼女とは人工的な延命を拒絶する運動を一緒にしていた。

彼が延命治療を選択した後、イレインも選択すると考えていた。

しかし、彼女は選択せず、当初の選択通り自然死していった。

彼女の死は、彼に大きな失望を与えました。

ところが、その後、彼は最先端の医療のおかげで200年以上生き続けています。

ビクターが死を望んだとしても、医師が停止することはありません。

それは殺人行為とみなされるからです。

彼が唯一選べるのは、定期的な若返り処置をするのをやめ、徐々に調子の悪くなる無数のバイオパーツを抱えながら歳を重ね、複雑な様相の死を迎えること。

それは、何十年もの時間がかかり、おそらくひどい苦痛が伴うかもしれない。

このような話はSFではなく、いくつかのテクノロジーは開発中なのです。

この冒頭の話で、読者をぐっとつかんで、様々な問題提起をしていきます。

例えば

・生体データは誰のものでしょうか?

・最先端テクノロジーは軍事から生まれます。それをどう考えましょう?

・治療とエンハンス(能力増強)の境界線は?

・アルツハイマーを治すためにエンハンスが良い可能性があることはどう考えるとよいのか?

・脳と外部情報を直接つなぐことの是非は?

・マインドをネットワークに残すこと(マインド・アップローディング)はどう考えるとよいのか?

・人間が何百年も生きる時にどのような課題が起きるのか?

・超高齢者の生きる未来はどのようなものか?

・ロボットと暮らす生活とはどのようなものか?

・ロボットが監視する社会とはどのようなものか?

・ロボットが起こした事故の責任は誰が負うのか?

・ロボットに人間をコピーしたら、どうなるのか?

・エンハンス(能力増強)がもたらす現実的問題はどのようなものか?

・私たちは何者なのか?

様々な問題が複雑に絡み合っていて、一筋縄では理解・解決できない問題ばかりです。

なかなか深い本ですよ。

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