2015年 10冊目『未来企業 レジリエンスの経営とリーダシップ』
昨年幾つかの本で取り上げられていた「レジリエンス」。
これを経営に活かそうというものです。
昨年読んだレジリエンス関連の本に触発され、年初、テックの社内報で「レジリエンスな経営」を行いたいと書いた直後でしたので、とても参考になりました。
著者は「ワークシフト」を書いたリンダ・グラットンさんです。
まず、今後数十年、企業と仕事に影響を及ぼす7つのポイントが挙げられています。
1 商品と労働のグローバル市場のバランス変化
2 人間と仕事が高度につながった社会
3 有能な人材の偏在
4 労働の空洞化
5 スキルギャップの拡大
6 貧困と格差
7 超異常気象
すべて、その通りだと思いますね。
この前提で考えるとレジリエンスは3つの領域に分類できます。
領域1 内なる(社内の)レジリエンスを高める
領域2 社内と社外の垣根を取り払う
領域3 グローバルな課題に立ち向う
まず、領域1の社内レジリエンスを高めるために、社内の人的資産の三角形を司る「知性と知恵」「精神的活力」「社会的つながり」を強化する必要があります。
まずは、「知性と知恵」の増幅手法です。4つの手法と事例が載っています。
1 アイデアを掘り起こす:インフォシス社の全従業員の共創プラットフォーム。
2 オープンイノベーションを活用する:P&G社のコネクトアンドデベロップ戦略。
3 実験して認識を高める:ゼロックスの報酬制度。
4 リスク負担を高く評価する:タタ社の「あえて挑んだ賞」の設定。
次に「精神的活力」を向上させるための3つの手法と事例が載っています。
1 働き方を変える:BT社は小規模で実験をし、全社に展開した
2 仕事中に自由時間を作る:WLゴア社(Googleと同じ)。
3 自然なリズムを合わせる:デロイト社は従業員が「出世のペース」「仕事量」「働く場所」「仕事の役割」を選択できるようにしています。
最後に「社会的つながり」についてDNAやヒッグス粒子の発見もこのような繋がりの成果である事が書かれた後で、4つの手法と事例が載っています。
1 責務の透明性を高める:モーニングスター社の自分の仕事を全員に開示。
2 サイバー空間で信頼を高めながら親睦を深める:TCS社の55カ国ネットワーク。
3 コミュニケーションを欠かさない:シスコ社のナレッジ共有。
4 思いやりの重要性を理解する:TCS社の「相手が信頼に足る人物でないとわかるまでは信頼する」と言うコンセプトなどが紹介されています。
「領域2 社内と社外の垣根を取り払う」について良き隣人としての行動規範として3つの方法について書かれています。
1 近隣の活力とレジリエンスを高める:ザッポス社のオープンなロスのオフィス。
2 近隣に思いやりを示す:ヤクルトレディの高齢者への気配り。(日本企業で唯一事例に取り上げられています)
3 地域住民の即戦力となるスキルを高める:インドのIT企業の教育支援。
続いて、グローバル企業がサプライチェーンの末端まで責任を持つことの必要性について触れています。イケア、ダノン、ナチュラなどの取組みが書かれています。「我々は関係ない」と言う事も出来るのですが、各社の従業員の多くは、改善のために関わりを持ちたいと思っているのです。
・「領域3 グローバルな課題に立ち向う」については研究とイノベーションの力を活用して取り組む方法として
1 コア・ケイパビリティを見極め、強化し、繋げる。DSM社とWFPの共同による「隠れた飢餓」撲滅への取組み。
2 専門家の洞察力を活用する。:Google Ideasによる若年層の失業と暴力組織対策の取組み。
3 専門家のスキルを活用する。:BCGとセーブ・ザ・チルドレンの取組み
などが書かれています。
ここまで読むと、私自身の視野視点の狭さを突きつけられて愕然とします。私自身の検討の範囲は「領域1 内なる(社内)のレジリエンスを高める」とせいぜい社外とのオープンイノベーションまでしかありませんでした。世界のリーダは地域やグローバルな課題まで考えているのです。
この本では、その後、このような問題に取り組む際のリーダシップについて書かれています。
ユニリーバ社のCEOポール・ポールマンの環境負荷を10年間で半分にする取組み。スタンダードチャタード銀行CEOピーター・サンズの3100万名以上の人の視力回復の取組み。ボーダフォンとサファリコムのBOP向けの携帯電話による銀行機能開発。人身売買(不法労働、強制労働、売買春)に関する大手企業の関係強化の取組み。など、世界では様々な取組みが行われています。
最後は、これらを実行できるリーダシップの作り方について書かれています。
その難しさとして「金融市場における短期主義」「市民運動の激化」「企業の信用低下」「増長するフォロワー」「可視化と透明性」が挙げられています。
これらを前提に(ある意味人工的に)リーダを作るには「組織の周辺を経験させる」「厳しい試練を与える」「内省と対話を促す」と言う3つが重要だと書かれています。
この3つについて、私自身、レベルはともかくも経験させてもらってきたと思います。
ただ、圧倒的にかけているのが4つめの「世界を見据える視座を持つ」です。
これは圧倒的に欠けています。世界も、見据えるも、視座も足りてないなと思います。さてどうしたもんかと自問自答し出しています。
視点や視野も広がります。
お勧めです。
▼前回のブックレビューです。
▼PIVOTに出演しました。よかったらご覧ください。