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第3回六枚道場提出策です。 本文 あとがき
冷たい手に息を吹きかける。夜行バスを待つために集まった人たちの声がモザイクのように感じられ、知らない異国にいるような気分になった。見上げると名古屋駅のツインタワー。エレベーターが光りながら上下しているのをぼんやり眺める。明滅する赤い光は何を表しているのだろう。この世界には、僕には読み取れないサインがそこら中にあって、そういうものを感じると、いったいどうやって生きていけばいいのか、自分がどこから来て、どこへ向かおうとしているのかわからなくなってしまう。不安が胸に滲み寄るのを感
メルバっていうのは女の人の名前だよ。左隣のカップルの男がそう言うのを聞いて私は顔を上げた。ほんと?とタッチパネルの前で指を彷徨わせている女の子が疑わしげな目を向ける。私はアイスメルバをスプーンでひとくちすくった。 「ほんとだって。たしかオーストラリアだかイギリスだかの歌手がいきつけのホテルかレストランかで、新しいデザートが食べたいっていうからシェフが考えだしたのがピーチメルバ」 「めっちゃあやふやじゃん。しかもこれアイスメルバって書いてあるよ」 「どんなデザートかわかり