和田毅人的騒動のまとめと私見
年明けからザワザワしている日本。例に漏れず、プロ野球界も大いに1月からザワついてる。
1/11の日刊スポーツにて「和田毅 人的補償で西武へ移籍」という報道がなされ、ファンや球界関係者に大きな衝撃を与えた。しかし、夕方には一変し「甲斐野央 人的補償で西武へ移籍」という正式なアナウンスがなされた。以降、憶測が憶測を呼びスポーツ紙やタブロイド紙を中心に様々な報道がなされている。
ということで、自分の頭の中を整理する意味も含めて今回の騒動についてまとめ、個人的な感想も記したい。なお、私自身の考えは一貫して「和田毅を悪者にしたくない」という思いのため、そこだけはご理解頂いた上で読んでもらいたい。
各紙の第一報
今回の移籍騒動の発端は冒頭でも記した通り1/11日刊スポーツ朝刊の記事である。
しかし、追随したのはテレビ西日本のみで、その他の大手各紙はSNSでファンが騒然としている様子を記事にした程度であった。
その後、甲斐野の移籍が正式に発表されると各社の情報合戦がはじまった。なお、第一報を打った日刊スポーツは、甲斐野の移籍発表後も当初の報道を誤報とは認めず、後述するように「和田の指名があった」という主張を繰り広げている。一方、追随したテレビ西日本は、その後の情報番組などでこの件を扱う際に「事実とは異なる報道をした」として謝罪している。
「方針転換」に対する各社の報じ方
今回の件が未だに尾を引いている大きな要因は、「当初は和田を指名したが、両球団の話し合いにより方針を転換して甲斐野の移籍で決まった」という報道がなされたためであろう。これが事実だとすれば、人的補償制度の根幹が揺らぎかねない。しかし、今回の騒動の経緯については各媒体で主張が少し異なっている。
このように各社の主張はかなりバラツキがあるが、「和田がプロテクトリストから漏れていた」という内容は共通している。経緯についても、大きく噂されている球団間の話し合いを主張しているのは日刊スポーツのみであり、「報道時点では決まっていなかった」と真逆の主張を東スポがしているのも興味深い。なお、これら大手の記事からは「和田が移籍を拒んだ」とする内容は出ていない。また、テレビ西日本にて放送された「福岡NEWSファイル CUBE」にて、スポーツライターの小鉄氏は「和田投手がゴネたという事実は一切ない」と完全否定している。
なぜ「週刊現代」説が推されるのか
そんな中で騒動から3日経った14日に週刊現代が報じたのは、和田が移籍を拒んだという内容だった。
「週刊現代」といえば過去に「娘はワクチンで血を噴いて死んだ」という記事を発信したり、芸能人や企業に裁判を起こされる事もしばしばある媒体。正直、他の大手スポーツ紙や週刊誌と比べてもメディアとしての信頼度には大きく欠ける。しかし、現状としてこの記事は大きく拡散され、和田のInstagramのコメント欄には罵詈雑言も多く見受けられる事態となった。
ここからは個人的意見だが、この記事が拡散され支持されている背景には、「人格者とまで言われた選手を悪者にした方が面白いから」という心理が一部ファンの間で働いているのではと推察する。私自身は、大手から「和田が移籍を拒否した」という情報が出ていない以上、議論の対象にすらならないと感じている。
ソフトバンクフロントへの違和感
今回の騒動で私が最も感じたのは、ソフトバンクフロントへの違和感である。過去に内川や松田などのレジェンドクラスへの処遇などでフロントへの不信感を持つファンは多かったが、今回の騒動はその比ではない失態だと感じる。
そもそも和田は、小久保新監督から開幕ローテーションを確約された完全な戦力である。「功労者だから」とかいう話以前に、ここまで監督が期待している主力投手をプロテクトから漏らしているというのが前代未聞だ。更には、西武は過去に江藤智・内海哲也・長野久義といった実績組を人的補償として獲得してきた経緯もある。この前提がある時点で「年齢が上だから指名されるとは思わなかった」という言い訳は全く通用しない。
また、仮にソフトバンクが西武側に泣きついたのが本当なら、人的補償制度そのものを揺るがしかねない重大な事案である。現在の流れではフロントが責任を取る雰囲気ではないが、上層部の首が飛んでも仕方の無い大問題。小久保新監督の掲げた「美しさ」に最も欠けるのはフロントなのかもしれない。
文句は尽きないが、もう一つ言いたい事は「選手を守る気はあるのか?」という点である。フロントがノーコメントを貫いている以上、矢面に立たされるのは選手である。先述したように和田のInstagramには罵詈雑言が数多く見られる事態だ。更に、現状では「甲斐野ならファンへの影響が少ないとフロントが判断した」と捉えられかねない状況でもある。プロテクトリストに関わる問題であり、安易に触れられないのは分かるが、球団としてもう少しアクションがあっても良いのではないか。
西武に非はないのか?
この章に関しても「両球団による話し合いがあった」「指名選手変更はソフトバンクからの提案」という前提のもと進めるが、今回の件では西武に対しても「なぜソフトバンクの提案を受け入れてしまったのか?」という疑問が残る。それこそ、プロテクト内の選手を引き出すために提案を受け入れたなら、決して褒められた話では無い。ただ、ソフトバンク側の読みの甘さと安易な提案がそもそもの問題であるのは間違いない。西武が悪いとすれば、割合で言うと1~2パーセント程であろう。
また、小見出しの内容からはズレるが「西武が和田を指名したのは正解なのか?」という意見もあったが、個人的には大正解だと考える。西武は、髙橋光成がポスティングで近々移籍すると噂されており、源田・外崎らの年齢も考慮すると、今年優勝を狙いに行きたい状況である。そんな中で、ローテーションである程度の勝ち数を見込める和田が加われば大きな戦力となる。また、内海が現役晩年からコーチ就任後も若手に良い影響を与え続けている事からも、近い役割を担える和田を選択するのは頷ける。
和田のコメントの是非
そして渦中の本人である和田毅は、15日に行われた自主トレ後の取材において、今回の騒動について初めて言及した。
この発言が報じられると「これでは引退示唆を認めたようなものだ」など、様々な否定的意見が飛び出した。
個人的な意見としては、今回の発言は「そこまで問題視するべきものか?」というのが率直なものである。そもそも「否定しない=認めた」という図式は少々強引ではないだろうか。プロテクトリストに関わる案件は重要な機密事項である。球団フロントがノーコメントを貫く以上、本人から勝手な発信をするのは得策では無い。
また、「考えたくないという言葉選びは不適切ではないか?」という声も聞かれるが、この部分に関しては和田の本音が出てしまったと推察する。確かに最適な答えであったかと言えばそうでは無いと思うが、プロテクトされていないという事実は、長年レジェンドとして君臨した投手にとってセンシティブなもの。触れたくない気持ちは察するに余りある。
最後に「甲斐野についてエールは無いのか?」という意見も見られたが、ここで甲斐野に対して「頑張ってほしい」と言ったところで、騒ぎたいファンの玩具にされ終わるだけだ。また、甲斐野自身も公で和田がエールを送る事を望んでいるとは思えない。
まとめ
ここまで様々な見解を述べてきたが、結局のところ事実として明らかになっているのは「甲斐野が西武へ移籍すること」「和田が2024年もソフトバンクでプレーすること」のみである。そして、これから真相が明らかになることも恐らくないであろう。ただ、ひとまず願うことは選手個人に言葉の刃が向かない事と、和田と甲斐野が今年もマウンドで躍動する事のみである。
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