
誰も皆悲しみを抱いてる だけど素敵な明日を願っている
6月2日公開、是枝裕和監督と脚本家坂元裕二さんがタッグを組んで創られ、坂本龍一さんが音楽を手がけた作品、『怪物』を観ました。
サブスクリプションのサービスが浸透している近年、
映画館できちんと一作品に対して一人分の鑑賞料金を支払って映画を観たのは、すごく久しぶりだった。
映画館は「映画を観る場所」であって、それ以外の何者でもない。
売店で買うポップコーンやコーラも、「映画を観る」ための引き立て役であって、メインディッシュではない。
家や通学途中の電車でNetflixを開くのではなく、
きちんと「映画」が主役である場所で鑑賞するのは、情報過多な世の中から120分切り離されて、作品に没頭できる良さがある。
映画はシングルマザーの母親、その息子の担任を受け持つ先生、小学生の息子の3人の視点から構成される。
同じ情景が3回繰り返されるから初めは時系列を追うのに必死だったけれど、
全員が同じ事実を追随しているにも関わらず、三者三様の心情を織り交ぜた視点から見ると、見えている景色が全然違って、自己と他者の乖離を痛感させられた。
田村由美さんの漫画、『ミステリという勿れ』の中で、整くんが昔冤罪事件を起こした青砥巡査部長に向けて言った言葉。
「事実は一つです」
「真実は人の数だけあるんですよ」
「警察が調べるのは事実であり、人の真実なんかじゃない」
私の映画に対する解釈は、
「誰もが、誰かにとっての怪物になり得る」
ということ。
誰かを守ろうと必死になれば、別の誰かを傷つけてしまう可能性がある。
人間関係を構築する上で、
この事実を忘れずに他者と接することができる人になれたらいいな。
タイトルはミスチルのHANABIの歌詞。
「怪物だーれだ」
臆病風に吹かれて波風がたった世界を
どれだけ愛することができるだろう?