肩こりを考える
「肩こり」
診断名ではなく症状名であり、
重苦しい、痛い、張っているなど訴えは様々。
肩こりの訴えで代表的なのが、
僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋である。
上肢の運動時、これらの筋は上肢帯(肩甲骨と鎖骨)に付着するほかの筋と協力して上肢帯を動かし、肩関節窩の位置や向きを変えて肩関節の可動域を広げる。
一方、非運動時には、これらの筋は重量に抗して上肢を吊り下げる作用をもち、常に持続的な等尺性収縮を強いられることが、肩こりや痛みをもたらす一因となっている。
今回は僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋を
少し深掘りしてこうと思う。
「僧帽筋」
僧帽筋の作用は、全体としては肩甲骨の内転。
筋束の違いから上部、中部、下部があり、
上部 鎖骨・肩甲骨の挙上と肩甲骨の上方回旋
中部 肩甲骨の内転
下部 肩甲骨の下制と上方回旋
以上の作用がある。
中でも抗重力作用の観点から、
肩甲骨挙上作用をもつ上部が肩こりの要因になりやすいと考えられている。
肩こりを訴える患者では
・肩の頂点で僧帽筋の前縁に一致するあたり
・後頭部中央のやや外側で頭板状筋の外側縁
・肩甲挙筋や菱形筋の肩甲骨付着部にあたる肩甲骨上角部周囲
以上に筋の緊張の亢進と圧痛が認められる。
僧帽筋の過緊張は頸横動脈の循環障害を引き起こし、肩こりをきたす。
「肩甲挙筋」
名前の通り肩甲骨を挙上する筋肉。
肩甲挙筋の外側を僧帽筋に分布する副神経や頸横動脈浅枝が通り、菱形筋に向かう肩甲背神経と頸横動脈深枝が内側を通る。
動脈には静脈が伴行し、静脈叢を形成している。
肩甲挙筋の過緊張も頸横動・静脈の循環障害を起こし、肩こりをきたす。
「菱形筋」
菱形筋は、小菱形筋と大菱形筋に分けられる。
小菱形筋は、第6〜7頸椎棘突起から起始し、肩甲骨内側縁(肩甲骨棘三角より頭側)に停止する。
大菱形筋は、第1〜4胸椎棘突起から起始し、肩甲骨内側縁(肩甲骨棘三角より尾側)に停止する。
いずれの菱形筋も、肩甲骨の内転と挙上、さらに下方回旋に関与する。
菱形筋は前鋸筋とともに肩甲骨を胸郭に引き付ける。
肩こりのようなこりや痛みを寛解するには、
持続的な等尺性収縮によって筋肉に蓄積された疲労物質を早々に除去し、疼痛スパズムサイクルに陥らないようにする必要がある。
そのためには、筋への血液供給路と排出路が正しく機能していることが1つの要件となる。
僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋への
血液供給路としては頸横動脈
血液排出路としては頸横静脈があげられる。
次回は肩こりに影響する筋への栄養血管
これを題材にしようと思う。
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