『村弘氏穂の日経下段』連載開始します。
ご無沙汰してます、村弘氏穂です。
もう何年も前のことなんだけど、日本経済新聞の歌壇の選者を長年つとめ上げた岡井隆氏が、こんなことを紙面で表明していました。
「わたしの選歌欄の一席から末席までの序列イコール決して作品の優劣ではない」
うん、たしかこんな感じの記述だったと思います。
毎週の日経歌壇に選出した十二首はどれも同等の次元で優れた作品だというんです。
実際のところ、岡井氏は年末に選出をする年間の優秀作品の全てを毎週の一席の作品以外から採りあげた年度などもありました。
現在、日経歌壇にて投稿者や読者からの絶大な人気を得ている穂村弘氏が果たして岡井氏と同様の意識で掲載しているかどうかはまあ判らないんだけど、選歌された下段の作品にも独創的で斬新な短歌が載っているケースが多々あるんですよね。
他にもそう思っている読者さんて結構いるんじゃないかな。
だけど投稿者にとっては下段だとなかなか大喜びもできないんですよね。
だって残念なことに選評が付かないんだもの。
せっかく掲載されたのに、五席までの作品にはコメントが付いていて、それ以外には付いていなかったらやっぱり上の方が秀作なのかなって思っちゃうよね。
選考理由だってわからないから、ちゃんと歌意を汲んでもらえてるのかもなんだか不安だろうし。
もしかしたらだけど選者は、作品の出来栄えはもちろんだけど、寸評をしやすい作品を上位に設定したりしていないかな。
だってものすごくいい作品なんだけど、その歌の素晴らしさを紙面の限られたスペースに収めてコメントするのが大変な場合だってありそうだもの。
どうなんだろう、選者がその味わい深さを手短に言語化するのが難しい短歌だってきっとあると思うんだけどな。
そういうわけで、この四月から敬愛するあの穂村弘氏の思念を無断で借りて、下段の優れた作品を無断で引用して、勝手に選評を執筆することにしました。