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近代日本文学を代表する傑作―三島由紀夫の『金閣寺』④

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11月第1作目には三島由紀夫の小説、『金閣寺』を取り上げます。

『金閣寺』は、1950(昭和25)年七月二日に、実際に起きた金閣寺放火事件をもとに書かれた小説です。

鬼才・三島の全青春をかけた総決算にして、近代日本文学を代表する傑作として、海外でも高い評価を得ています。



『金閣寺』……鬼才・三島の全青春の総決算にして、近代日本文学を代表する傑作

三島由紀夫(1925~1970)

東京都生まれ。
本名、平岡公威(ひらおかきみたけ)。
小説家、劇作家。
学習院中等科時代に小説『花ざかりの森』が同人誌「文藝文化」に掲載される。
東京大学法学部卒業。大蔵省(現財務省)に入省するも、九カ月で退職し、執筆活動に入る。
晩年は民兵組織「楯の会」を結成し、右翼的政治活動を行う。
1970年、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で自衛隊員にクーデターを呼びかけるが果たせず、割腹自殺した。享年四十五歳。

代表作品:『仮面の告白』『金閣寺』『鹿鳴館』『憂国』『豊穣の海』など。


【書き出し】


幼時から父は、私によく、金閣のことを語った。

私の生れたのは、舞鶴から東北の、日本海へ突き出たうらさびしい岬である。

父の故郷はそこではなく、舞鶴東郊の志楽である。

懇望されて、僧籍に入り、辺鄙な岬の寺の住職になり、その地で妻をもらって、私という子を授けた。


【名言】


この世のどこかに、まだ私自身の知らない使命が私を待っているような気がしていた。

美ということだけを思いつめると、人間はこの世で最も暗黒な思想にしらずしらずぶつかるのである。

金閣を焼かなければならぬ。


※あらすじ(前編・後編)はこちら⇓⇓



【解説②】


三島由紀夫と川端康成

三島由紀夫を高く評価していたのが川端行成。

二人の作風は少しだけ異なりますが、お互いにリスペクトし合う関係は、生涯続いたようです。


「死」に対する卓越した描写


三島由紀夫の描く登場人物の心理描写には、他の追随を許さない深みがあると言われています。

それは、本質的な人間に対する洞察から導き出されているため、説得力があるのだそうです。

特に秀逸だと言われているのが、「死に対する描写」です。

最終的には自刃の道を選んだのが三島由紀夫。

作者自身が常に死について考え続けていたからこそ、深い洞察を含んだ死への描写が可能になっていったのかもしれません。

『金閣寺』で描かれる「死に対する描写」の一例をご紹介しましょう。


「私はただ災禍を、大破局を、人間的規模を絶した悲劇を、人間も物質も、醜いものも美しいものも、おしなべて同一の条件下に押しつぶしてしまう巨大な天の圧搾機のようなものを夢みていた。

ともすると早春の空のただならぬ煌めきは、地上をおおうほど巨きな斧の、すずしい刃の光りのようにも思われた。

私はただその落下を待った。
考える暇も与えないほどすみやかな落下を」


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