小泊でのちょっと贅沢すぎる暮らし 小泊漁協で働く伊藤竜太さん
中泊町は内陸の中里地区と海沿いの小泊地区に分かれています。中里から車で運転すること約三十分、日本海に面した小泊地区があります。
今回のインタビューは小泊漁協で製氷業とマツカワガレイの養殖を行っている伊藤竜太さんに、小泊での暮らしについてインタビューさせていただきました。
良いですよ、小泊の海は。
――伊藤さんの生まれ育った場所について教えてください。
私の生まれ育った場所は、 青森県中泊町の小泊です。漁師町ですよね。漁業が盛んに行われていて、 主に津軽海峡メバルやマグロ、 スルメイカなどが水揚げされています。
だから遊び場は山や海で、 友達とよく海へ泳ぎに行ったり 釣りをして遊んでいました。
うちの父親も自分が幼い頃もともと漁師でカニを獲っていまして、幼い頃からよくカニを食べていましたね。
――贅沢な幼少期ですね。
カニ漁は自分が小学校一年生までくらいはやっていたんですけど、そのあとはカニが全然取れなくなって。そのあと親は船を降りんですけどね。
それでもこっちに住んでいれば新鮮なもの食べられますよね。
――伊藤さんは小泊以外の場所には住んだことがないのですか。
短期間だけ東京でトンネルを作る仕事をしていたこともあります。そのあとはまた小泊に戻ってきました。
漁協に入社する前は、漁協市場でスルメイカやマグロの荷揚げのアルバイトをしていて、 その後正社員として働いています。もう漁協で働いて十四年目くらいになりますね。
地元の海とか自然が本当に好きなんですよ。
だから地元の海とか自然に関わる仕事をずっとしたいなと思っていて。それでちょうどいいタイミングに話しかけてもらって良かったな。
――やっぱり小さいころから海で遊んでいた思い出があるからですか。
やっぱりそうですね、小さい頃に海であそんでいたからですか。私のころは同級生60人くらい、子供たちも結構いたのでみんなで遊んだりとか。
良いですよ、小泊の海は。
しけとか海が荒れることはあるんですけど、でもここに住めるのはちょっと贅沢か。なんて、はは。
めごいマツカワガレイたち
――漁協では具体的にどのような仕事を行っていますか。
漁協ではマツカワガレイの養殖のほかに製氷業を行っています。
マツカワガレイの養殖施設の管理に関しては製氷業もやっていて一人だと大変なので三浦さんという方と一緒に協力してやっています。
――漁協で製氷業ってどういうことですか。
魚を出荷するときに箱の下に敷く用の氷を作ったり、あと製氷場で事務作業したりしています。
1年間で1番多く氷が出る時は8月で、1日だけで43トン近く必要になります。氷一丁で135kgくらいなので300本くらいの氷が必要です。氷が足りないと大変なので製氷業務も重要ですね。
――なるほど、漁協に製氷の仕事があるなんて知らなかったです。マツカワガレイの養殖は何がきっかけで始めたのですか。
小泊の海はしけが多くてですね、その分漁獲量も少なくて。漁師さんも高齢化などで少しずつ減っているので、次の新しい策は無いかということで育てる漁業にチャレンジすることになった。
役場や漁協の人が竜飛養殖生産組合の養殖施設に視察に行って、最初はウスメバルの養殖を検討していたんですが。
たまたま同じ施設内にいたマツカワガレイの養殖を見て、それで存在を知って「マツカワガレイやってみよう」となったのがきっかけですね。僕が視察に行ったわけじゃないんですけどね。
その後、中泊町や青森県水産総合研究所から全面的に支援していただいて、2018年からマツカワガレイ養殖試験を始めて4年目になります。
――新しいことを始めるのに非難されることはありましたか。
漁師さんの間では無理だべって言われることはありましたね。やっぱり養殖だと経費がかかったりするので。
でも成長率はすごく良いんですよ。一年三か月くらいで1㎏くらいになりますし。試験出荷でもすごい高評価で、「すごくおいしい」「また買いたいな」って言ってもらって。
マツカワガレイって北海道の方が名産地なんですけど、札幌市場のほうにも出してそこでも高評価していただいたので、マツカワガレイって凄い魚なんだなって思いました。
――たった4年ですごいですね。それでも試験中なのですね。
そこでも高評価していただいたので、マツカワガレイって凄い魚なんだなって思いました。
――マツカワガレイの養殖では具体的にどのような仕事をしていますか。
自分が担当している作業内容は、マツカワガレイを試験養殖している施設と港内の生簀の管理、水温を測ったり掃除したり、1か月に1回計測をしたり、給餌は1日に2回あげてます。
給餌を行う際にマツカワガレイが元気に海面まで泳いでエサを求めてきてくれるときは癒されますね。やっぱり元気じゃないと餌食べてくれないので、おなかすいていっぱい餌食べていると嬉しいですね。
それと餌をあげ終わってから泳いでるときにマツカワガレイが手のひらに乗ったりするとやっぱりかわいいなぁと思います。
まだ試験とはいえ、大事に育てているマツカワガレイなのでおいしく食べてもらいたいと思って、神経締めで出荷しています。
――神経締めって神経を抜くっていうことですか。
そうですね。専用の器具を使って脳を麻痺させて血抜きして、背骨の中に髄があってそこにワイヤーを通して神経を抜くと動かなくなる。
動いて暴れたりすると熱をもって鮮度が落ちやすくなるので、神経締めだと動きを止めて、しっかり海水氷で冷やし込みをすることで鮮度を保つことができる。
せっかく育てた魚なのでやっぱり一番新鮮な状態で食べてほしいと思って、お世話になっている青森市内の魚屋さんに勉強しに通いました。
こだわりとして一尾一尾神経締め処理を行っているので、 食べて頂いた方においしいと言われる時は本当に嬉しいですね。
命がけの漁師たち
――漁協でお仕事されていてどのような時に「働いててよかったな」と感じますか。
地元の海が好きなので海を眺めながら仕事する時。
それと漁師さんが命がけで津軽海峡の荒波に向かい、 命がけで獲ってきたものが高値で取引された時や大漁してきた時ですね。
――命がけということは本当に亡くなる方もいるんですか。
そうですね。昨年は海難事故が多い年でした。
漁業者の方が海難事故に遭遇してに貴重な漁師さんを失った時は、本当に仕事が辛いし。悲しいですね。
自分は漁師さんのことを尊敬しているし。
貴重な漁師さんたちじゃないですか。年齢も高くなってきて少なくなってきて、戦力になっている漁師さんが亡くなってしまうと辛いですよね。
――小泊の漁師さんと話したことがないんですけど、漁師さんってどういう方が多いんですか。
年配の漁師さんだと津軽弁がきつくて最初は怒っているのかなという感じ、あははは。でも話してみるとみんな良い人ですね。
それともう一つ仕事をしていて辛いと思ったことは、大事に育てたマツカワガレイがへい死すること。
夏場の水温が上昇して一気に死んだとき、あの、本当に悲しい。
稚魚から作って育てて、めごがって(かわいがって)育てたマツカワガレイが死んじゃうのは本当に悲しかったです。だからへい死させないようにするには、どうやったらいいのか色々試しています。
町は遊び場
――これからは自分の活動を通してどのように地域を盛り上げたいと思っていますか。
マツカワガレイの養殖も町の協力無くては出来ないので、これが地域の活性化となって新たな雇用を生むこと出来たら良いと思います。
担当者としては、毎日愛情を注ぎこんで飼育している 「めごご達」(かわいいマツカワガレイのこと)がきっかけでもっと町が盛り上がれば良いなと思っています。
そのためには飼育管理のやり方を確立させて、自分が出来ることをー生懸命頑張ります。
それと小泊の人と話してると「小泊何もないから」っていうんですけど。
――それはみんな言いますね。
でしょ。でもこんなに良い自然があるじゃん!って伝えていきたいですね。
山菜採りや釣りが趣味なので、もう町は遊び場ですね。
そこをもっと知ってほしいなと思ってインスタグラムとかFacebookとかで発信したりとかして。こうやって発信しています。
――うわすごい!おいしそうですね。全部ご自分で料理されたんですか。
そうですね、自分で釣った魚をさばいて写してますね。
私も漁協で働き始めたときはさばけなかったんですけど、漁師さんから結構魚貰うようになったので。さばけないのはもったいないなと思って、Youtubeを見て勉強しましたね。
小泊は本当に魚介全般おいしいんですよ。メバルは有名になったんですけどほかの種類の魚にもスポットを当ててほしいなと思います。
――スポットが当たってないけど本当はおいしい魚教えてください。
本当にいっぱいありますよ。
その中でも特に小泊のマゾイっていう魚が釣りで水揚げされるんですけど、県内だけでなく遠いところで関西の料亭に出されたりしいて、なかなか知られていないんじゃないかなって思いますけどね。
これからの時期はサメ刺網漁が始まったので真鱈も水揚げされていて鍋にするとおいしいですよね。あと、マグロも脂のってきてちょうどおいしいです。
自分は趣味でよく子供ともタコ獲り行ったりするんですよ。
――息子さんも海に行くのが好きなんですか。
そうですね。子供はまだ小学校一年生なんですけど、漁協で働きたいって言っていてくれて。子供も海が好きで一緒に海に泳ぎに行ったりとか、自分が釣り行くときも一緒についてきたり。
自分が小さい頃にやっていたことと同じことを子供もやっていますね。
小泊住んでいてよかったなぁ。ちょっとこんな生活は贅沢すぎますかね。
――小泊での贅沢な暮らし羨ましい限りです。
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