「ソーセージは加熱せずに食べられる」って知らない人もいるようなので、深掘りしながら伝えたい
「シャウエッセンなどのウインナーソーセージは、加熱しないでも、そのまま食べられる」
いまさら何を言ってるんだ? と思うかもしれないが、この事実を知らない人が意外といるようだ。今回は、知っているようで知らなかった「ソーセージの知識」を深掘りしながら、その魅力に迫ってみよう。
ソーセージはそのまま食べられる
ある日の家飲み会のこと。
冷蔵庫にあった「伊藤ハム お徳用ウインナー」で、つまみをつくっていた。ただ焼くだけじゃ芸がないので、タコさん風に揚げてみることに。
なつかしいビジュアルが好評で「もっと揚げて!」とのリクエストが。
それに応えて次々と揚げる。タコさんの足を切って、クルッと広がるように支えながら揚げる。つまみが追いつかない。いい感じによっぱらった私には、この作業が面倒くさい。
「もう、これ以上つくれそうにないから、そのまま食べて!」
思わず、冷たいままのウインナーを、友人に差し出した。
「えっ!? ウインナーって、そのまま食べられるの!?」
衝撃だった。
もちろん、焼くなり、ゆでるなり、加熱したほうがおいしいに決まってる。冷たいままのウインナーを食べろだなんて、暴挙だってわかってる。
でも、そのまま食べられることを知らないなんて……!
・・・
お肉検定のテキストにも、書いてある。
これを読んだとき、当たり前すぎて、何をいまさら… と思ったが、逆の見方をすると「加熱せずに食べられること」を知らない人がいるってことだ。
・・・
かつてSNSでも話題になっていた。
シャウエッセンの「よくある質問」に掲載されている「そのままでも食べられます」という回答が拡散され、ネット上では「そのまま!?」「知らなかった」と、驚きの声が広がっていたのだ。
友人も、そのまま食べられることを知らなかったひとりだ。
「サンドイッチに挟んであるスライスハムは、そのまま食べるよね? ハムとソーセージは同じ製法でつくられているので、火を通さなくても食べられるんだよ。」
こう説明すると、なんとなく理解してくれたようだ。
ハム・ソーセージの製法
ハムやソーセージが、加熱せずそのまま食べられる理由は、製法にある。製造工程で「加熱・殺菌処理」が行われているため、そのままでも食べられるのだ。
食品衛生法では「加熱食肉製品」に分類される。
◎ ハム・ソーセージは「肉の漬物」
ハム・ソーセージの原材料を見ると、発色剤に使われている「亜硝酸Na」という化学的な名前が気になる人もいるだろう。これにも理由がある。
ヨーロッパが発祥のハム・ソーセージは、冷蔵施設がなかった時代の「肉の漬け物」ともいえる保存食だ。
豚肉を保存するために、岩塩を肉にまぶして漬けたところ、岩塩に含まれる硝酸塩が亜硝酸塩に変わり、風味を良くして、肉を鮮やかに発色させた。亜硝酸塩は、食中毒の原因となるボツリヌス菌も抑制できる。その知恵から、食品添加物の「亜硝酸ナトリウム」が使われるようになった。
それなら岩塩を使ったほうが安全じゃないか、と思うかもしれないが、天然の成分は安定しない。それで、食品添加物が使われているのだ。
焼かないと食べられない「生ソーセージ」とは?
ソーセージの仲間には、加熱が必要な「生ソーセージ」というものもある。味付けされた生のタネが詰めてあり、お肉屋さんでは、手作りのものが販売されている。
見た目がナマ肉なので、間違うことはないと思うが、これらは焼く・ゆでるなどの加熱調理が必要だ。ついでに消費期限も短い。
「ソーセージ」と「ウインナー」の違い
同じ商品なのに、ウインナーだのソーセージだの、呼び方が違うことがある。どれが正しい名前なのか、混乱したことはないだろうか?
ソーセージは、詰めている「腸(ケーシング)の種類」や「太さ」で分類され、JAS規格(日本農林規格)で定義されている。
「ソーセージ」とは、腸詰のこと。ひき肉を塩や香辛料で味付けして、動物の腸などの筒状の袋(ケーシング)に詰めた食品の「総称」だ。それを商品として呼ぶ際に、この規格にあった名前がつけられている。
どれもソーセージの仲間なので、正式名称は「ウインナーソーセージ」「フランクフルトソーセージ」「ボロニアソーセージ」となる。
つまり「ソーセージ」と「ウインナー」の違いは、苗字で呼ぶか、名前で呼ぶか、みたいなもの だ。
例えば、プリマハム「香薫」は、ポークの「ソーセージ」であり「ウインナー」の規格に分類される商品、ということだね。
ソーセージの皮「ケーシング」
「ケーシング」とは、ソーセージの原料を詰める袋のこと。主に、動物の腸が使われるが、コラーゲンなどでつくられた「人工ケーシング」もある。
かといって、大量生産の家庭用ソーセージが、どれも人工ケーシングというわけでもない。例えば、日本ハム「シャウエッセン」は、天然の羊腸を使用している。だから、パリッとした食感が楽しめるのだ。
◎ これぞ、天然ケーシング! ソーセージ用「豚小腸」
お肉の専門店では、ソーセージ用の天然腸を扱っていることもある。
これは、生の「豚小腸」だ。
このひと山で、全長3m!
直径は 25mmだ。
「フランクフルト」の JAS規格は、豚腸・直径 20~36mm だったね。
まさに教科書通り、ぴったりの天然腸だ!
しかし腸を見ていたら、もつ焼きが食べたくなって、そのまま焼いて食べてしまった……。
次こそは、手づくりソーセージに挑戦するぞ!
縛られたパッケージには理由があった!
ここでちょっと豆知識。かつて、ウインナーソーセージは、縛られたパッケージだったことを覚えているだろうか?
これは2019年の晩酌つまみ写真。当時のプリマハム「香薫」は、ちょんまげのようなパッケージだ。
このスタイルは、1985年に発売された、日本ハム「シャウエッセン」から始まった。 巾着型に包んである理由は「売場で目立つ」からだ。他社も追随し、このパッケージングが主流となった。
1袋には、5~6本しか入っていないが、できるだけ大きく見せる。巾着型に縛った部分には金テープをほどこし「高級感」を演出する。バブルの時代は、それが良かったのかもしれない。しかし、現代では「ムダ」と捉えられる。余分な包装資材に加えて、保管や出荷の際にも余分なスペースを取る。輸送効率も悪く、環境に優しくない。
2022年の春、各社パッケージをリニューアルし、巾着型から袋型に切り替わった。時代の流れで、世の中の価値観が180度変わったことも、ソーセージから読み取れるだろう。
みんな大好き! ソーセージ!
農畜産業振興機構の「食肉の家計消費動向」によると、令和5年のソーセージ購入数量は、1世帯あたり1,831g。シャウエッセン1本(約20g)に換算すると、年間約91本、家庭で食べている計算だ。
外食も含めたら、もっと食べているかもしれない。
レストラン、居酒屋、お弁当でも。お祭り屋台やサービスエリア、コンビニのフランクフルト。ピザや惣菜パンにまで!
気がつけばそこにあり、いつの間にか食べている。
もはや、日本の国民食だ。
おそるべし、ソーセージ!