備忘録#5 [生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ]
東京国立近代美術館で開催されていた展覧会で、2023年に印象に残っている展覧会の1つ。
1956年に第28回ヴェネチア・ビエンナーレでの国際版画大賞を受賞した世界的な画家、棟方志功の展覧会。
「わだばゴッホになる」というパンチラインを残し、有言実行した男。
棟方にゆかりのある青森、東京、福光(富山)を軸に、彼の芸術の変遷を辿っていくような内容。
もう会期は終わってるけど、展覧会のだいたいの様子はここで見れる。
特に印象に残った作品はこれ。
「基督の柵」という作品。
裏千家の茶道雑誌『淡交』の企画で、茶道で用いる茶掛け用に制作した茶掛十二ヶ月板画柵作品のうち、クリスマスに因んだ12月のキリスト像を独立させたもの。
特徴的な表具は民藝運動の主唱者である柳宗悦によるもので、師弟の合作といえる。
なんだこの作品。めっちゃいいな。。
真ん中は阿弥陀聖衆来迎図の背景からの引用かな。左右はキリストの十字架。和洋折衷だね。
キリストの衣は幾何学模様でパワフルかつ緻密に表現されて、ぐるぐると視線が誘導される。真ん中の作品は代表作である「門世の柵」のような特徴的な色使いで着色されている。
また、極端に余白が少なく、柳宗悦の表具にダイレクトに接続されるようで飛び出さんばかりの躍動を感じられる。
この作品の前からずーっと動かない人がいて、斜めからしか撮れなかったけど。その気持ちも分かる。
柳宗悦の兵具指示書もあった。細かくディレクションされている様子が窺える。
柳宗悦は、1936年4月の国画会会場で棟方志功の作品「大和し美し」を購入している。これをきっかけに柳宗悦や河井寛次郎などの民藝の主要人物と交流を深めていく。
その後の作品には柳宗悦の厳しい指導監修が入っていくことになるけど、それによってどんどん世界に羽ばたいていく。
そこまで有名でない版画家だった彼をフックアップする柳宗悦の目利きは流石としか言いようがない。
前に書いたキース・ヘリングとかもそうだけど、熱量を持って行動している人は、必要なタイミングで重要な人物と巡り合っていくんだな。
とてもいい展示だった。また、日本の美術や民藝にもより興味を持つきっかけになった。