内緒の関係 のん奥様のストーリー②
「お電話ありがとうございます。内緒の関係春日部店でございます」
電話の向こうから聞こえてきたのは、愛想がよく落ち着いた声だった。予約をしたいという旨を伝えたが、肝心のどの子にするかを決めていない。
「あー…おすすめの子とかいますか」
ばつの悪い思いをしながら尋ねると、スタッフは快く今スケジュールが空いている女性を探してくれた。保留の音楽が少し流れたのち、お待たせしましたと再び受話器が取られる音がする。
「のん奥様はいかがでしょうか?当店でも人気の奥様でして、明るく人懐っこい人柄が魅力にございます」
片手でスマホを耳に当てつつ、店のサイトからその女性を探してみる。顔こそ見ることが出来ないが、掲載されている写真にはどこか子猫のようなあどけない雰囲気があった。性欲だけではなく誰かに癒されたいという思いもあった俺は、躊躇することなく即決したのだった。
「それじゃあ彼女でお願いしようかなと」
「かしこまりました。それでは今から向かわせますので、よろしくお願いいたします」
こちらから電話を切った後、自分がスウェット姿のままだということに気付き慌ててクローゼットを開けた。若い女性に触れるのはいつぶりだろうか。少しでも清潔感のある服をとハンガーを手繰り寄せながら、俺は柄にもなく鼓動が早くなるのを感じていた。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?