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【挿絵あり】№44_召喚術の授業は××な魔物と、 …過去を引きずる人に贈る、ヒーリングBL…

【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、現代的で現実的なファンタジー召喚BLです。


 
「…こ、これで絶滅は免れるんですね。」
気を取り直して、魔物の方へ振り返りながら聞いてみた。
しかし意外なことに、白い首は横に振られたのだった。

「いやまだだ。この2匹は両方ともオスだ。万が一のことを考えて繁殖は見送っている。」
「えっ、ど、どうしてですか?」
「この亜空間にできることは0に近いが、”歪み穴”が発生した場合、外に逃げられる恐れがある。
 そうなった時、お前の存在が他に認知されかねないからだ。」
思いもよらぬところで、自分に話が繋がってきたのだった。

「ち、ちなみに…バレたらどうなりますか…?」


「…そうだな、魔界中の領主達が湿原へと攻め込んでくる……そういう可能性もなくはない。」

魔界随一の豊かな地が、火の海と化す――

(そ、そんな…、そんな事っ…!……)
その様を想像し、足元が崩れ去りそうな絶望感に襲われた。
蒼白となった僕の顔を見て、魔物はため息をついた。

「そんな顔をする必要はない。
 今のところ露見する可能性はごく僅かだ。
 元々湿原内の情報統制は行っているし、私の研究施設からも痕跡が漏れないよう対策を徹底している。」
そう話しながら、魔物は白い手で僕の頬を宥めるように撫でた。

「そもそも、人間がこのような魔力を持つなど信じられない話なのだ。
 だから、」

頬に置かれた手が、視線ごと僕の顔を持ち上げた。
ペリドットの瞳が瞬くのが見えた。

「あれは事故だ。事故だったんだ。」
ドクン…

蝶の青い羽ばたき。

灰緑のリスのつぶらな瞳。

”また、あいつ殺したのかよ!?”


あの出来事の原因を知る術がなかったことを、知らずにいられることを、僕は密かに安堵していた。
本当のことを知ることは、とても怖かった。
……自分のせいじゃないと、ずっと思い込んでいたかった。

最初にここに連れてこられた日。
あの時、魔物の言った事を鵜呑みにはできないと思いながらも、その説明に納得している自分がいた。

でも同時に認めたくなかった。
耐えられなかった。
自分自身が魔物達を死に追いやった原因だった、という真実を。
だからこそ余計に、彼の言葉を否定しようとしたのだ。
「っ……………」

そんな真実を直視できず俯き続けた弱い人間へ、慈雨のような言葉がしめやかに降ってきた。

「誰も知り得なかった。
 お前も、他の人間も、召喚に応じた魔物達も…
 私でさえ、これほど特異な魔力を持つ者が存在するとは、思いもしなかった。」

この魔物はきっと、僕がずっと罪の意識に苛まれていたことに気づいていたのだろう。
身に染み込んでいくような声を受けながら、そう思った。

「お前のせいではない。」

若葉を透かす陽光に似た瞳が、それだけがただ一つの真実であると告げていた。


暗闇を照らすようなその強い煌めきに、今だけは押し流されたかった。
彼の言葉をそのまま飲み込んで、自分の真実にしたくなった。

魔物はそんな僕を、ただ静かに見守っていた。

 

 

自室の窓の外には、夜の砂漠が広がっていた。

(黄色い花畑も好きだったけど、白い砂漠も綺麗だな…)
屋敷の周りの景色は、温室の出来事から数日後には様変わりしていた。
これもたぶん、僕の精神衛生への悪影響を領主様が懸念されたためだろう。

「………」
魔物が施工した劇的亜空間リフォームのアフターを眺めながら、僕は今日見聞きしたことを思い返していた。

魔力の保管容器、魔力の同質化、人間の魔力の保管兼増幅装置とも言えるこの亜空間…

薄暗い飼育室にいた希少種の数々、”自称・月桂樹の魔物”からの生態に関する証言、それに由来する研究動機や思想…
そして。

「絶滅するはずだった、翡翠蝶…か」

今日だけでかなり多くの情報を、しかも比較的信憑性が高そうな情報を得ることができた。多すぎて知恵熱が出そうなくらいだ。
だが今のところ、「人間の世界を害する気はないし、それをさせる気もない」という魔物の言葉を裏付けるような材料はないままだった。

(結局、留まっても地獄、進んでも地獄な状況は変わらない…)
どうすればいいのだろうか。
正しい答えがあるとは思えない。むしろ道が自分の前後で途切れているようにさえ思えてしまう。

「……………、」

あいつもあの時、こんな気持ちだったんだろうか…?

僕には――

 

 

 

___________________________

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
ぼっち的に「話の肝」部分までAIに学習されると困るので、
無料公開はここまでとさせていただきます。

続きは後で、有料掲載させていただく予定です。

ちなみに2024.3月時点で文章はほぼ完成し、今は挿絵などを作成しながら、気になるところをちょいちょい手直ししている感じです。
「完全版はサウンドノベルやノベルゲーの形にしたい!」と目論んでおります。

完成版ができましたら、このnoteでも周知したいと思っております。

 
ではまた~ 

1話目はこちら




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