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【挿絵あり】№41_召喚術の授業は××な魔物と、 …過去を引きずる人に贈る、ヒーリングBL…

【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、割と現代的で現実的なファンタジー召喚BLです。


 
「それを補うため、翼を持つ種や機動性が高い攻撃手段を持つ種に、住処や貴重な物資の提供・融通をしてやっている。
 始めたのはだいぶ大昔の事だ。」

住処を与えるというのは割と聞く話だった。
領主の中には、人間社会で言う「住民税」を取り立てている者もいる。
だがそれを軍備補強の手段として行っているケースは、初めて聞いた。

「私が提供する住処や物資が無くなれば、困り果てる者達が大勢でる。
 今では湿原以外にもそういう者達がいるほどだ。
 翼有種らをはじめそういった者達は、湿原や私に何かあれば全力で戦わざるを得ない。
 稀少な能力などを持つ種族の保護も似たような理由だ。」

絶滅するような一見弱い種族でも、生き残るために珍しい力を持っている者もいる。
製作の難しい薬や機具の材料になることもある。

「私は強弱だけでは計れない利用価値、存在価値があると考えている。
 生きる力自体は弱くとも、その事実に流されることなく生きようと努める者達。
 たとえ劣弱な存在であろうとも、私はそういう者らには、好感を覚える…」

たとえ実を結ばずとも、その姿勢、気高さには敬意を払うべきだとも思う。
その先にしか、思わぬ変化や進化は起こりえないのだから。
遠くを見るような眼差しで研究動機を語った白緑の魔物は、そう言って話を締めくくった。

そのどこか慎ましさを帯びた横顔を見つめながら、僕は見学を始めてから気になっていたことを尋ねた。

「…あの、湿原の生態系があれだけ豊かなのも、L様が管理しているからですか?」

「ああ、その影響はあるだろう。
 ”戦力”となる者達が暮らしやすい、より良い住環境となるよう配慮しているからな。
 それに、生態系が豊かなことは私にとっても色々と得があるのだ。
 …思わぬ恩恵も受けたしな」
と僕を見て最後に言葉を付け足した。

「そういった事情もあって、私は魔界が波立つ状況になることを避けたいと考えている。」
人間を喰らい力を付けた魔物達は、魔界でも暴れまわる事となる。
魔界の勢力図が変わり得るきっかけが生じることを、魔物は望んでいないのだという。
 

「多少湿原に火の手が及んでも、私自身が困ることはないだろう。
 だが、せっかくこの手で整えてやった豊かな地を、荒らされるのは不快でしかない。」
魔物はそう言って少し眉をひそめた。
そして独り言のように不可思議な内容を付け加えた。

「武器も道具も使うために揃えるものだ。
 が、かと言って意味なく消費してしまうのは、私も惜しいと思う。」
「?…」

(武器、道具……
 もしかして、”戦力”となる魔物や、保全研究している魔物達の事か…?)

 

意味なく消費してしまうのは、惜しい。
湿原の環境と同じく、手間暇かけて揃えてきた”戦力”や研究成果を、無駄に使い潰してしまうのはもったいない。
そんな感じだろうか。

(…じゃあ、あれは…?)

「ッ、…………」
思い出したくない出来事の中で、少し引っかかっていた事があった。
白緑の魔物を、親のように慕う様子を見せた花の魔物。

(自分をいたぶった相手に同情はしないけど…)

ただ。
彼はよかったんだろうか、あんな風に切り捨ててしまって。
自分が忍び込んだせいで、この白緑の魔物が後悔したりしていないだろうか…?
そんな思いが心の片隅にずっと残っていたのだった。

「…ぁ、あの…、僕が迷い込んでしまった植物園の、あの花は…枯らしてしまってよかったんですか?」
僕の質問を受けて、魔物は驚いたように目を見開いた。

それからこちらを探るようにじっと見つめた後、口を開いた。



今回はここまでにします~
ではまた~ 

1話目はこちら




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