「これからの生き方。」を読んで -自分の価値観を知ることを助け、応援してくれる一冊-
私は今年35歳になります。30代に入り「生き方」に関心が強くなって、去年の頭にプロボノとして「共働き未来大学」というプロジェクトの運営メンバーとして関わっています。
また今年の6月末、新卒で入社し12年勤めてきたPR会社を卒業し、現在サバティカル期間を過ごしています。
仕事から少し離れている今だからこそ北野唯我さんの最新刊「これからの生き方。」は気になるテーマだったので予約し、届いてすぐ一気に読みました。
この本は第1章に漫画編(物語編)・第2章にワーク編(自己分析編)・第3章に独自編(生き方編)という構成になっていて、仕事や育児に忙しくても一気に理解しながら読める作りになっています。
ワーク編はアメリカの心理学者 ドナルド・E・スーパー氏の提唱した「14の労働価値」を北野さんがアレンジしたものと漫画編のキャラクターの価値観比較表から始まります。職場での衝突や人との衝突が、この価値観の違いによって起きるということと「仕事への価値観」のどこが違い、どこが同じか確認しあうことということが紹介されています。
私は去年、統計心理学 i-colorというものを学んだのですが、その際 3つの価値観グループの違いを知り、異なる価値観の人とのコミュニケーションの取り方を考えたり、同時に近年見失っていた自分の心が本当にワクワクすることを思い出すきっかけとなった時間でした。
また北野さんは14の労働価値を「分散して満たすこと」を推奨しています。一つの場所ですべてを無理に求めようとしないこと。具体的には副業や趣味を使って、本業では満たせない価値観を満たすことを紹介されているのですが、ここもとても共感しました。
世の中には「一つのことだけ集中しろ」と言われやすい職種(ex.職人など)や、考え方も存在します。これは、ある種「年齢やタイミングによっては」正しい考え方だと思います。若いときや、いろいろなことに手を出しすぎて何もうまくいかないとき、どうしても何か一つで成果を出さなければならない人生の節目など、こういうときは、「一つのことに集中すること」「エネルギーを集中させること」はとても大事かと思います。
しかし、多くの人にとって、人生は長期戦であり、マラソンに近いものです。年齢やタイミングが変われば、価値観は変わっていくものですから、現実的には、分散させることも生きていくための手段として認めるべきだと私は思います。そのことで救われる人もたくさんいると思っています。
(北野唯我(2020),『これからの生き方。』世界文化社 p.216より)
私も20代は広報・PRの仕事をちゃんとできるようになりたい一心でがむしゃらに働いて、時に会社に一人で寝泊まりしたりしていた時もあります。何かをものにするために自発的に(←ここ大事)集中する時も必要だと過去の経験から思います。
ただ長期間その働き方をして成果の出る状態を持続できるか?というと難しいような気がします。たまたま私は出産というライフイベントでそれまでの働き方や価値観を根本的に見直す必要が生まれ、それでも仕事をしているからには成果も出したいという葛藤の中、本業だけを長時間行うことはできないだけに何かかけ算で新しい価値をうめないかとプロボノや地域ボランティアといった会社ではない場所で社外の人とお金を稼ぐことを目的としない仕事をする機会を持ちました。
そこでは自分の価値観を満たすだけでなく、会社で実践の機会のない領域を経験したり、複数の組織を横断することでの気付きなどもたくさんありました。
「本業では一つのことに打ち込み、副業や趣味で分散させる」という生き方は今現在の私にはしっくりくる生き方です。
続いて渋沢栄一氏の「論語と算盤」の北野さんによるアレンジで「知恵・情愛・意思」の3つの能力を4パターンに分類して詳しくポイントを紹介されています。
①スキル型のキャリア(知恵を強みにして、キャリアを積み重ねていく方法)
②意思型のキャリア(意思を強みにして、キャリアを積み重ねていく方法)
③チーム型のキャリア(情愛を強みにして、キャリアを積み重ねていく方法)
④バランス型のキャリア(バランスを重視して、キャリアを積み重ねていく方法)
(北野唯我(2020),『これからの生き方。』世界文化社 p.226より)
という4パターンで、自分が何を軸にしてキャリアを積み重ねていくかという方法論を紹介されています。
どれか一つがずっと当てはまるというものでもなく、あるときはスキル型だし、あるときは意思型である、というように①自分の強みと、②今の人生のフェーズの2つによって決まるものだそう。
私の場合、元々は意思型で「自分がこうしたい」という気持ちがかなり強かったと思います。
ただ就活の頃に迷走し自分自身の存在価値が分からなくなり、20代は「個」を消して「黒子」として広報の仕事に励んできました。また強い意思型の人が多い環境で揉まれたので、相対的にバランス型のような調整役として動くことが増えていったように思います。
2年前くらいに会社に社外のキャリコンの人が来て個人面談をした際に「(職場の他のメンバーと比べて)あなたは自分を押し殺している」というようなことを言われ、組織を円滑に回すためにという動機で好きで我慢している訳でないのに好きにやったもん勝ちのような言葉に悲しく悔しい気持ちになったことも読みながらふと思い出しました。
ぼんやりとこのままでいいんだっけ?と思うようになったきっかけはこうした心の動きと感じた違和感だった気がします。
「『普通』の人のためのSNSの教科書」についての投稿とも重なりますが、「自分の軸」を持って、業界第一人者でなくても自分のためのメモとしての発信をしていこうとこのパートを読んで改めて思いました。
第3章では、北野さんの阪神・淡路大震災の被災経験の中で
「人間というのは『生き方』だけは嘘がつけないものだと確信しました。年齢や国籍、職業などは関係ない。人は言葉で嘘をつくことができても、長い目で見たときの行動では決して嘘がつけない。それが真理である。」
という原体験からの言葉が胸に響きました。
私も世の中の固定概念に縛られ、変化の激しい時代にアップデートせず過去にしがみつくような生き方なんて、次世代を生きる子どもの前でしたくない。
感じた違和感にはじまり、その心にしたがって「自分の価値観に基づいて意思決定をして、行動し続けるかどうか」という「これからの生き方」を応援してくれる一冊でした。
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