見出し画像

論文出版:『年少英語学習者向け読み物教材の言語的特徴と難易度―英文解析プログラムによる多面的な分析に基づいて―』

小学校英語教育学会誌 (JES Journal) 20巻に以下の論文が掲載されました。ウェブ上でオープンアクセスになるのは発刊から一年後になります。
→ 公開になりました。

名畑目真吾・木村雪乃. (2020). 「年少英語学習者向け読み物教材の言語的特徴と難易度―英文解析プログラムによる多面的な分析に基づいて―」. 小学校英語教育学会誌 (JES Journal), 20, 70-85.

この研究では,年少者向けの英語読み物教材 (readers) を対象に,Coh-Metrixを使ってその言語的特徴を文章理解理論 (Graesser and McNamara, 2011) で提唱される単語,文(統語),テキストベース,状況モデルという理解の段階で評価し,どのような指標がその難易度の判別に貢献するかを調べた研究です。結果として,文の統語的類似性語彙的多様性など,大人向けの文章を分析した先行研究と同じ指標が判別に貢献していた一方で,語彙の獲得年齢動詞の意味的重複など,大人向けの教材ではあまり見られない指標も判別に貢献していました。後者の指標が年少者向けの教材で重要になるのは,理論的にも十分説明され得るので,面白い結果かなと思います。

この研究の前に名畑目(2018)と名畑目・木村(2019)という2つの論文を同じ学会誌に出していて,どちらも年少者向けの英語教材を扱ったものなのですが(今回の論文とは違う教材),2018のほうは潜在意味解析(LSA)を使っていて,2019のほうはCoh-Metrixで得られた指標を主成分分析でまとめるというアプローチを採用しています。今回の研究を含めたこれら一連の研究は,今後増えていくであろう小学生向けの英語教材が指導者の直感や感覚だけで作られるのではなく(このような方法は「直感的アプローチ」と呼ばれ有効とされている一方で),理論や客観的な指標に基づいて教材を作成することの意義も示せれば良いと思い,自分の博論で扱った文章理解に関する理論的知識を活用するアプローチを模索して始めたものです。

これまでの一連の研究の中で,本当にやってみたかったのは今回のようなアプローチの研究です。なので,今回の研究でこのテーマについては三部作的に完結した感じもするのですが,扱っている教材数も少ないし(年少者向けの教材はそもそもの母数が少ないので収集・選定に苦労します…),まだやりたいこと,やれることもありそうなのでもう少しだけ同じようなテーマで研究を続けようかなと思います。ただ,同じ学会で発表や論文掲載を重ねてきたものの,自分の期待とは裏腹に小学校英語の教材作成に関わっている研究者や出版社の人に興味を持ってもらっている気がしないので,発表・投稿を同じところでするかは決めていませんが…。

もし論文にご興味のある方がいらっしゃればご一報ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?