マイクロノベルちょいす 065「長い旅路のような」
No.1287
コマみたいなものなんだ。地球はちょっと傾いて太陽の周りを公転運動している。この傾きが時々ぶれるんだ。これを歳差運動という。高いところだとそれを体感できるんだよ。ほら、いま、ぼくの仲間たちが一斉に飛び立った。あのまま宇宙の果てまで行くのさ。
No.1294
学校からの帰り道に不思議な自販機を見つけた。ぜーんぶ100円。ケースに入ったかわいいぬいぐるみ。「お買い上げありがとう」すごい、しゃべって動くクマさんだ。慌ててポケットにしまって走って帰ったら動かない。騙されたのかな? 「ハアハア」あ、酸欠だ!
No.1309
わたしの夢は歌うこと。つらく苦しい現実から脱出するには、優しく力強い歌が必要なのです。でも、わたしには命も魂もなく、現実を打ち砕くなんて夢のまた夢。そんなとき、あなたが言葉をくれました。歌うことは生きること。機械の意地、見せてやりましょう!
No.1321
ご主人様がはじめてのおつかい? 心配だ。犬に噛まれないかな。「あれぇ、知らない道だ」大丈夫、このまま真っ直ぐだよ。戻っちゃダメ。GPS、オン! 「雨雲が近づいています」お天気アプリの音声に反応して犬がワンワン、ご主人様はUターン。計算どおり!
No.1331
まるでそれは螺旋の吹雪だった。粉雪が風に吹かれて舞い上がり、円を描きながら天井に頭をぶつけた。「あいたっ」電車の中でしゃがみ込む。「雪だー!」ドア付近にいた子どもたちがあっという間に雪だるまを作って、次の駅で降ろした。とけなくてよかったね。