見出し画像

春の始まり ケルトの祝祭インボルクは2月1日

いずこも同じ?春の気配?

ケルトの祝祭「インボルク」は、ハロウィンの「サウィン」から始まった冬の季節からの目覚めの時。ケルト神話の女神ブリジッド(またはブリギッド)の祝日でもあります。

ケルトの暦で1年を4つに分ける季節の節目に行なわれる四大祭りの1つ(後の2つは「ベルティナ」と「ルーナサ」)で、2月1日ですから、日本の立春とほぼ同じ時期ですね。冬至と春分のちょうど真ん中。やはり、どちらも同じくらいの時期に四季の移り変わりがある国なので、区切りが似ているということになるのでしょうか。緯度が似ている国には多かれ少なかれ似たような祝祭がありそうですね。(南半球は季節が逆になるので8月1日になるようですが、、、)

特に冬から春になるというのは、暗闇から少しずつ光が入ってくる感じで、うれしさ倍増。今のように電灯のなかった時代には、より一層この気配は敏感に感じられたのではないでしょうか。

おもにアイルランド、スコットランド、マン島などのケルト文化圏で古くから行われてきたようですが、その由来にはいくつかの説があります。

由来①まずは語源から

「インボルク」という言葉は、古アイルランド語の "Imbolg" に由来するとされ、これは「羊の乳袋(腹)の中」や「乳を持つこと」を意味します。これは、ちょうどこの時期に羊が子羊を産み、乳を出し始めることと関係があると考えられ、ケルトの人々にとって、羊の乳は冬を越すための貴重な食料だったため、この時期の出産と授乳は生命の再生を象徴していて、「乳」に関する儀式が多く行われていました。

ケルト文化において春の訪れを祝う重要な祭りでもあり、乳(ミルク)を使った料理を作ったり、この日のイブには、ジャガイモとバターのお祝いの食事を食べるという習慣もあるのだとか。

アイルランド大使館のSNSで紹介されていたアイルランド国立博物館リンクにその説明がありました。

On St Brigid’s Eve, a festive meal of potatoes and butter was eaten

博物館のホームページより

これ以外の風習などの説明もあるので、アイルランドの風習などにご興味のある方は、ぜひご覧になるのをお勧めします。
(リンクのページは英文ですが、Google Chromeで開くとページ全体を一瞬で翻訳して読むこともできますよ)

由来②ケルトの女神とキリスト教の聖人の祝日

冒頭でもお伝えしたようにインボルクは、ブリジッド(Brigid) というケルトの女神に捧げられる祭りでもありました。ブリジッドは、詩、鍛冶、治癒、豊穣などを司る多才な女神であり、とくに「春の訪れ」や「新しい命の誕生」と深く結びついています。キリスト教が広まった後は、ブリジッド信仰は聖ブリジッド(Saint Brigid) という聖人の形で受け継がれ、現在でもアイルランドではお祝いとしての伝統が続いています。(アイルランドでは、2023年から「聖ブリジッドの日」として正式な祝日になっています)

なお、ケルトの女神ブリジッドと聖ブリジッドは、名前は同じBrigidですが元々は別の存在です。

ケルトの女神ブリジッド(Brigid) 🔥🌿

ケルト神話に登場する「豊穣・火・鍛冶・治癒・詩」の女神として崇拝され、トゥアハ・デ・ダナンの一員(ケルトの神々の一族)である。
春・光・生命力の象徴 とされ、インボルクと強く結びついている。
井戸や川、炎と関係が深く、「三つの炎(詩・鍛冶・治癒)」を持つとされ、古代ケルトでは、多くの神殿や聖なる泉が彼女に捧げられた。

聖ブリジッド(St. Brigid)✝️

5世紀ごろに実在したと言われるアイルランドの修道女・聖人。
伝説ではアイルランド最初の女子修道院を創設し、貧しい人々を助けたり、「ブリジッドの十字(Brigid’s Cross)」 を作って、人々の家を守る護符としたと言われ、現在も、これを家の入り口に飾って家族の健康と豊穣を祈るという風習がある。
その修道院の近くには「聖なる火」があり、修道女たちが絶やさず守っていたとされている(これは女神ブリジッドの炎の名残とも言われる)。

キリスト教の影響が広がる中で、ケルトの女神信仰と融合した可能性が高く、両者が結びついたようです。

手作りで家に飾れる「聖ブリジッドの十字架(Brigid’s Cross)」の作り方が、こちらも大使館のSNSで紹介されていました。
イグサは畳の材料ですから、ここでもアイルランドと日本のつながりを感じるのは私だけでしょうか?

この十字架の形はいろんなバリエーションがあるということで、もう1つこちらも大使館のSNSから興味深い動画の紹介が。。。(なんと369点もの所蔵があるそうでビックリ😀)

アイルランド大使館 / Ireland in Japan on Instagram: "来る2月1日は、アイルランド唯一の女性の守護聖人 聖ブリジッドの日です。アイルランド国立博物館 (カントリーライフ館) のツアーにて、この祝日にまつわる興味深い展示物をご覧ください。 Clodagh Doyle, Keeper of the Irish Folklife Division, gives an introduction to St Brigid’s Day, an Irish festival which signaled the first day of spring in folk tradition. It was a time when people looked to St Brigid for blessings, protection and fertility for the year ahead. Join this online tour and discover more about St Brigid’s Day! 📹: @nationalmuseumofireland . . . . . #アイルランド #春 #聖ブリジッドの日 #聖ブリジッド #インボルク #ケルト暦 #ケルト #アイルランド国立博物館 #ケルト文化 #アイルランドの伝統 #アイルランド文化 #伝統 #伝統文化 #ireland #irelandinjapan #loveireland #celts #spring #stbrigid #stbrigidsday #women #creativity #imbolc #láfhéilebríde #irishculture #tradition #stbrigidscross #nationalmuseumofireland" irelandinjapan on January 29, 2025: "来る2月1日は、アイルランド唯一の女性の守護聖人 www.instagram.com


由来③冬から春へ 火と光と水で浄化と目覚めを

インボルクは、2月1日または2日に祝われることが多く、厳しい冬を乗り越え、春の兆しを感じる時期であり、人々は光と火の祭りとして、家の中や祭壇にロウソクやたいまつを灯したり、かがり火を焚いたりして、浄化と新たな始まりを祈る儀式を行なってお祝いしたようです。

また、冬の間、休眠していた大地が目覚める時期でもあり、農業に関連する儀式でもあったようで、種まきの準備を始めて新しい作物の成長を願ったり、井戸や川などの聖なる水で清める儀式や春の訪れを象徴する花や緑を家に飾る(雪割草やアザミなど)、などを行なっていたようです。

さらに詳しいことはガイドの山下さんに教えていただきましょう

ブリジッドの事を調べていたら、昨年当会のイベントにご登壇いただいたアイルランド政府公認観光ガイドの山下直子さんブログに詳しい説明が沢山ありました。アイルランドの事を調べると必ず山下さんの記事に当たるというくらい(ご本人も同じく検索するとヒットするとか😆)色々な事を載せていらっしゃるので何か知りたい時はとても勉強になります。

関連記事のリンクをいくつか載せさせていただきますので、よかったらみなさんも山下さんのご案内でご一緒に女神&聖ブリジッドの旅へ・・・。

折しも間もなく山下さんの新しい著作『季節で綴るアイルランド211 ケルトが彩る緑の島の心豊かな日々』が発売されるということで、たぶんこの祝祭などの説明も詳しく載っていそうな紹介文がこちらに。。。(この記事には2/20発売となっていますが、2/18に早まったそうです)
これは読むのが楽しみです。

ダブリンではこんな催しも

これまでの歴史を経て、いまもなお、お祝いされるインボルクとブリジッドのようですが、ダブリンではこんな素敵な女性のお祝い行事が行われていますよ。

詳しいホームページはこちらから。
ブリジッドのダブリン市女性祭は第4回目ということで2/3まで。
80を超える沢山の催しが行われるようです。面白そうですねぇ。

The fourth edition of Brigit: Dublin City Celebrating Women returns from Friday, 31st January to Monday, 3rd February 2025, with its largest programme to date. Over 80 thematic events will take place across the city, offering an exciting and diverse celebration of women’s contributions to culture, society, and history.

ページよりイベント説明の引用

日本でも、、、ぜひ

ちょっと遊んでChatGPTに「Brigid’s Crossを作って」と頼んだらこんなのを作ってくれましたよ。
最初は一般的によく見るものと違ってちょっとビックリしたのですが、上記のアイルランド国立博物館の説明動画を見たら、こういうのもありかな~、と思って折角だから載せておきますね。

an image of a traditional Brigid’s Cross by Chat GPT

インボルクは、「冬が終わり、春が近づいている」ことを祝うお祭りです。

🔥 「火(光)を灯し、古いものを手放し、新しい目標を迎える」

こんな風に考えてみるのも楽しそう。
1/29に旧正月を迎え、節分、立春が目の前の日本でも、これはちょうどよいお祝いですね。
この週末は寒くなるようですが、温かいお部屋でちょっとロウソクなど灯して、乳製品を使ったお菓子やお料理を作って新しい始まりを迎える、ケルトの雰囲気を味わってみるのもよさそうです。

(C)



いいなと思ったら応援しよう!