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"抽象的な理解ができない人"になってない?

"あの話とこの話は同じなんやで。"
なんど怒られたことか。昔世話になった経営の家系に生まれた人がいる。しかし、怒鳴られ過ぎて私がストレスと嫌悪感を抱き、最終的に喧嘩別れしてしまった。しかし、今思うとその人には大切なことをたくさん教えてもらったと感じる。
そのうちの一つ、"抽象と具体の話"を紹介する。若干、長いがこれは死ぬほど役に立つので、是非読んでほしい。
幸い、これができているおかげで、歴代務めてきた会社でも現職でも、お客さん、会社、チームに貢献できていると心の底から感じるし、岸部露伴のようにずっと成長し続けている自覚がある。(僕は、成長している!ソフトウェア開発者としても、スタンド使いとしても。)
よく、年を取って "20歳(、25歳、30歳)ってこんなものか、もっと大人になっていると思った。"という話を聞くが、私は全くそんなことはない。あの頃に想像していた”年を取った自分”をはるかに超える人間になっていると自負している。
この話の結論は、あらゆる具体的な出来事を抽象的に理解することで、日頃直面する問題に対して、効率的に方針決定と実践ができる(=原理原則を理解する)ということである。

抽象的な話しかしない上司

私が20代前半に勤めていたベンチャー企業で実業家一族に生まれた人の部下として働いていた。その上司の父がその会社のCEOだった。私は、その上司のいわゆる、"かばん持ち"。年がら年中ともに行動していた。20代のガキが普通会えないような方々と交流できた。金持ち社長や億単位を動かすトレーダー、世界トップ大学のお偉いさん、天才数学者など、何もできない若造だった私にはもったいないくらい贅沢な機会だったと思う。その上司のおかげで、そういった経験に加え、経営、仕事のノウハウを叩き込まれた。
その上司は、基本的に抽象的なアドバイスしかしない。例えば、"覚悟せなあかんねやで。" 当時の私は、"全く理解できない。お前ちゃんと説明しろよ" と思っていた。まあ、そのあと説明してくれるんだけど。

"アイドルをやるならストーカー被害にあうのは半ば当たり前。ストーカー被害に遭ってからブーブー言うな。わかってたやろ。しっかり対策しておけ。そのリスクをとってアイドルやってんねやろ"

"グレーなことに手を出したなら、それが発覚して法的な立場が危ぶまれるのは当然。優秀な弁護士、税理士雇うなりして、対処しておけ。それでもだめなら結果を受け止めなあかん。それが覚悟"

(この話を聞いて、アイドルであろうとストーカー被害を看過できない、グレーなことするなと注意したくなったあなたは抽象と具体を理解していない。)
まあ、もちろん、アイドルだからと言ってストーカー被害に遭うのを受け入れろとも思わないし、グレーなことするのがとっても良いこととも思わない。だが、ここでの本質は、予知できることに対して対策をして、それでもだめなら責任を取れということ。会社経営するなら無一文になる覚悟持っておけということ。

具体的な話に食いついてしまう私

前述のアイドルの話やグレーな話を聞いたときに、"アイドルになりませんし。"とか、"グレーなことしたらダメじゃないですか。"と答えてしまった日には、もう地獄である。全身を震わせた上司が、怒号を私に浴びさせてくれる。そんな私は、"枝葉な話に食いつくな" は耳タコ。

当時の私は、具体的な事例にばかり目が行き、本質を見落としていた。上司が伝えたかったのは、"覚悟しなければいけない"という抽象的な教訓であり、それをわかりやすくするために、アイドルの話を具体例として話していた。本質的な話には全く触れられず、こういった枝葉な話だけをマスコミに切り取られて、辞職に追い込まれた政治家が何人いただろう。上司がいたら、マスコミにも説教してたと思う。政治家さんお疲れ様です。

アイドルになるつもりもなければ、グレーなことをする気もなかった私は、"それは違う"と考えが頭をよぎり、上司の言葉の真意を理解できず、結果として怒りを買ってしまった。

これに当てはまる人は、若いころの私ではないはず。"モテるテクニックは何ですか" とか、"今成功するビジネスは何ですか"  とか具体的な正解を聞きたがる人や、"男女差別だ" など本質を理解せず、枝葉な発言を取り上げてけしからんと誹謗中傷する人はたくさんいる。

私がXやヤフコメが嫌いな理由はこれだ。枝葉な話ばかりに食いつく人々とは会話ができない。

"あの話とこの話は一緒"

上司と社長がよく口にしていた "あの話とこの話は一緒やで" という言葉。最初はポカンと聞いていたのを覚えている。
話は変わるが、私は格闘ゲームをよくしていた時期がある。格闘ゲームでは、勝利するためにさまざまな要素を考慮する必要がある。

まず、自分と相手との距離を常に意識する。近距離では強力な攻撃が可能だが、相手からの反撃も受けやすい。一方、遠距離では安全だが、攻撃のチャンスが限られる。この距離感の調整は、ビジネスにおける顧客や競合他社との関係性にも通じる。近すぎず遠すぎず、最適な距離感を保つことで効果的なコミュニケーションや戦略が可能になる。

次に、自分と相手の体力を把握する。自分の体力が少ない、かつ、相手の体力が多いときには、逆転するためにリスクを取る必要がある。これは、プロジェクトのリソース管理や自身のコンディション管理にも当てはまる。限られたリソースで最大の効果を出すためには、状況に応じた柔軟な対応が求められる。

さらに、この場面で相手がどのような行動を取りたがるのかを予測する。例えば、自分の体力が少ないとき、相手は一気に畳みかけてくる可能性が高い。それに対して、カウンター攻撃を準備するなどの先読みが重要だ。ビジネスでも、相手の次の一手を予測し、先手を打つことで有利に進めることができる。

また、この技は発動までに時間がかかるから、相手はそのリスクを取ってこないだろう、といった判断も必要だ。これは、投資や新規事業のリスク評価にも似ている。相手や市場がどのようなリスクを取る可能性があるのかを分析し、それに対応した戦略を立てることで、成功率を高めることができる。

これらの要素を総合的に判断し、瞬時に最適な行動を選択する能力は、まさにビジネスの現場で求められるスキルである。上司の"あの話とこの話は一緒やで"という言葉は、異なる分野でも本質的な考え方は共通しているという意味だったのだ。

格闘ゲームで培った状況判断力や先読みの力、リスク管理のスキルは、仕事においても大いに役立っている。一見無関係に見える趣味の中にも、仕事や人生に活かせる教訓、原理原則が隠されていることに気づいたとき、視野が大きく広がった。

この概念を理解したとき、近頃ゲームがEスポーツといわれる所以や、ある分野で活躍した人が別の分野でも素晴らしい実績を残すことが多い理由もよくわかる。

日常のあらゆる出来事を抽象的に理解して、教訓を得る

過去どんな出来事があって、どう解決したかこと細かく覚えていますか?大体の人は無理でしょ。具体的な事例だけを覚えても、新しい状況に直面したときに応用が利かない。企業のお偉いさんの話を思い出してほしい。リスクを取れとか、経営者支店を持てとか抽象的な話ばかりしているはずである。

そこで、日常の出来事を抽象的に理解し、教訓を得ることが重要である。ニュースや歴史、周囲の人々、そして自分自身に起こった出来事を抽象化することで、共通するパターンや原理を見つけ出すことができる。

例えば、ニュースで企業の不祥事が報道されたとする。ただ事実を知るだけでなく、その背景にある組織の問題や倫理観の欠如といった抽象的な要因に目を向ける。これにより、自分の職場でも同様の問題が起きないように予防策を考えることができる。

北海道で起きた船舶沈没事故があったが、そこから教訓を得るとしたら、"人の命がかかわっている場合、いけんだろと思っても心のどこかでほんの!ほんっの少しでもやばいと思ったらやめる。"となる。
気温がこのくらいで、雲の量がこのくらいで、...というように具体的な事象のまま覚えようとしても、別の分野に活かせないことは明白である。

また、歴史上の出来事を学ぶ際も同様である。戦争や革命などの具体的な事象から、人間の欲望や権力構造といった普遍的なテーマを抽出する。これらの教訓は、現代社会の問題を理解し、未来を見据える上で大いに役立つ。

例えば、歴史で言うと、太平洋戦争のミッドウェー海戦から得られる教訓は、"組織における末端はどう頑張っても、その結果は上司の判断によって決まる。" "上司は、速やかに判断し、実行する。やっぱりこっちやっぱりあっち、というようにどっちつかずなかじ取りは失敗に終わる"となる。

抽象的な理解を会得すれば、対応策を考えるのが楽になる

抽象的な理解から具体的な対応策を導き出すことで、さまざまな問題に効果的に対処できる。抽象的な原則やパターンを理解しておくと、新しい状況でも迅速に適切な行動を選択することが可能になる。

スケジュールが遅れているとき

# 抽象的な理解
リソースの制約下で目標を達成するためには、優先順位の調整や戦略の見直しが必要である。

# 具体的な対応策:
- 品質の調整
必要に応じて機能や仕様の一部を削減し、重要な部分にリソースを集中させる。
- 期限の延長
ステークホルダーと協議し、納期の延長を検討する。
- 原因の究明とプロセス改善
原因を究明したら意外と、別の解決策を見つけられることがまれにある。

格闘ゲームで負け気味のとき

# 抽象的な理解
劣勢な状況を打開するためには、リスクを取ってでも大きな成果を狙う必要がある。

# 具体的な対応策
- 大技を使う
リスクは高いが一発逆転の可能性がある強力な技を繰り出す。
- 相手のパターンを読む
相手の行動パターンを分析し、効果的なカウンターを狙う。
- 立ち回りを変える
守備的な戦術から攻撃的な戦術に切り替えるなど、戦略を大きく変更する。

相手の話を理解できないとき

# 抽象的な理解
コミュニケーションギャップは情報不足や認識の違いから生じるため、それを埋める努力が必要である。

# 具体的な対応策
- 前提知識の確認
自分が理解していない専門用語や背景情報がないか確認する。
- 質問をする
わからない点を具体的に質問し、相手に説明を求める。
- 要約して確認する
相手の話を自分なりに要約して伝え、理解が合っているか確認する。

まとめ

この記事では、具体的な出来事を抽象的に理解することで、効率的に問題解決ができる方法を紹介している。筆者はかつて、抽象的なアドバイスばかりする上司の下で働いていた。当時はその意味がわからず、具体的な話にばかり目が行き、本質を見落としていた。しかし、後になってその価値に気づき、日常や仕事で大いに役立っていると感じている。

上司の言葉である"覚悟しなければいけない"という抽象的な教訓は、予測できるリスクに対して対策を講じ、それでも結果が悪ければ責任を取る覚悟を持つべきだという普遍的な真理、原理原則を伝えていた。具体的な事例(アイドルのストーカー被害やグレーな行為のリスク)にとらわれず、その背後にある本質を理解することが重要である。

また、"あの話とこの話は一緒"という言葉から、異なる分野でも共通する原理や考え方があることを学んだ。格闘ゲームでの戦略や状況判断力がビジネスにも応用できるように、日常のあらゆる出来事を抽象化し、教訓を得ることで視野が広がり、対応策を考えるのが楽になる。

抽象的な理解を深めることで、スケジュール遅延やコミュニケーションの問題など、さまざまな状況で効果的な具体策を迅速に導き出せるようになる。結論として、抽象と具体を行き来する思考法を身につけることで、デキる人になれるというコツを伝えさせていただいた。では、どのように訓練すればいい?という話は、また今度。

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