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リーンキャンバス:顧客が先か?課題が先か?
リーンキャンバスというフレームワークがある。簡単に言えば、新しいビジネスを起こす際に必要な要素を視覚化するもの。この手のフレームワークは世の中にいくつもあるが、リーンキャンバスでは九つの要素を書き出す。リーンキャンバスに限らず、フレームワークは、思考の漏れを防ぐ、必要な事柄を満遍なく考える、といった利点を持つ一種の思考ツールである。
今回は、その順番に焦点を当てたい。
九つの要素を簡単に並べると、以下の通りである。
顧客:ビジネスのターゲットとなる相手
課題:顧客が抱える課題
独自の価値提案:他と異なる、選ばれる理由
ソリューション:具体的な機能、課題の解決手法
チャネル:顧客にソリューションを届ける方法
収益性:企業が収益を得る流れ
コスト構造:ソリューション提供に必要なコスト
評価指標:ビジネスモデルの成功/失敗を評価する指標
優位性:競合他社と比べて自社が有利な点
細かい話は、マーケティングを専門とする記事を見ていただくのがわかりやすい。要するに、「新しいビジネスを考えるにはこの九つの要素が不可欠であるため、こフレームワークの下書きとしてビジネスプランの妥当性を検証していきましょう」という方針がリーンキャンバスの考え方である。
私が気になったいるのは、これらの要素をどの順番で埋めるか?という点である。端的に言うと、何故か顧客と課題の順番が記事によってまちまちなのである。
例えばこんな記事。こちらでは①顧客、②課題、と言う順で記載されている。
もう一つはこんな記事。こちらでは①課題、②顧客、と記載されている。
こういう時は、出典元を調べるに限る。
リーンキャンバスの元になっているのは、リーンスタートアップという考え方。ズバリ『リーン・スタートアップ』という書籍である。
この内容をより実践的、具体的な手法に落とし込んだものが『RUNNING LEAN』である。そして問題のリーンキャンバスはこの書籍での内容が元になっている。のだが、、、。
この『RUNNING LEAN』においては、リーンキャンバスはこのように表現されている。
ここでは①課題、②顧客である。
だが、これで解決かというと微妙なところ。なぜなら、本文にはこのように書かれている。
ターゲットとなる顧客セグメントに対して、解決すべき課題の上位1〜3位を記述しましょう。あるいは、顧客に必要なジョブ(用事)の観点から、課題について考えてみましょう。
この本文を額面通りに捉えるならば、①顧客、②課題と読み取れる。おそらくはこれが混乱の元ではなかろうか。
では、結局どちらから埋めるのが正解か?
先に言ってしまうと、「順番はさほど重要ではない」という元も子もない結論が正しいように思う。主な理由は二つある。
一つは、課題と顧客がしっかりとペアになっていることが重要だから、という理由である。ビジネスを立ち上げるにあたり、顧客(ターゲット)を具体的に思い描けること。そしてその顧客が抱えている課題もまた、正確に理解していること。この二つが正しく噛み合っていることこそが必要であり、どちらが先、というものではないだろう。
もう一つは、実際のビジネスの構築においては、これらは一回で決まらず、何度もブラッシュアップするから、という理由である。これらの情報は、最初のうちは仮説(あるいは思いこみ)で埋めていくしかない。その仮説が正しいかどうかを検証していく過程こそが、スタートアップの活動そのものである。仮説が更新されたら、当然リーンキャンバスの中身も変わっていく。その際、顧客の内容を更新することもあれば、課題を刷新することもあるだろう。どちらを先に埋めたとしても、結局はそれらの実体に近づくにつれてキャンバスの中身も更新されていくはずである。その過程において、順番という要素はあまり重要ではないだろう。
以上のように、リーンキャンバスについて調べると、顧客が先か?課題が先か?という疑問が生まれる。その答えは「順番はさほど重要ではない」という、曖昧なものになってしまった、という話でした。