君は天使
わたしは2年前
同じ双極性障害の男の子と出会った
初めて会ったのに
以前から知っていたような
不思議な感覚があった
わたしは今まで3回ほど
躁状態になったことがある
躁になると
わたしは人のオーラが見えるとか
オーラは人によって色が違って
その人の気分や状態も色でわかる
そんなことを思っていた
やれると思えば何でもできると思っていたし
お金もどんどん使ってしまう
いずれ今使ったお金は無駄にならないと
根拠の無い自信があった
そして、
時期がくると鬱状態に変わり
無気力で寝たきりになった
冒頭の同じ病気の男の子と
こんなことを話していた
世の中はみんなおかしい
すべて多数決の原理で決まっている
わたし達は少数派
だから、「病気」になる
でも、もしもわたし達のような人達が
多数派だったら?
世の中の「健常」な人が少数だったら?
なんて、
ありもしないことをたくさん話した
男の子はその時躁状態だった
言動も荒々しく
自分のことを「神」と言っていた
そして、わたしのことは「天使」と言った
健常者から見たら
ただの病人の誇大妄想になるのかな
わたしは幼い頃、予知ができた
本当は予知じゃなくて
ただ、可能性の妄想が激しかっただけなんだけど
人から告げられる前に
誰かが亡くなりそう、亡くなった
もしくは、
ここで飛び出したら車に跳ねられると思ったときには
目の前で小学1年生の同級生が
跳ねられて本当に空を舞った
わたしには罪悪感があった
わたしがそのような妄想をしたせいで
事故を引き寄せてしまったんじゃないかと
でも、
今現実的に考えて、わたしにそんな力はないし
この世の中にそんな超能力者みたいな人
もしいたとしても
わたしはそうじゃない
ただの、妄想癖のある病人で精神障害者なのだ
わたしは今、
かろうじて普通の職場に普通の派遣社員として勤めている
私生活は、健常な中学生の娘と二人暮し
普段は、家に帰ると一切外出はしない
この数年間、会社以外の人と会っていない
いつの間にか誰にも会いたいと
思わなくなってしまった
病気が悪化しているわけでもない
ただ、ひっそりと趣味の配信アプリで
ネット上の友達と会話する
本当にそれで十分
わたしには、
この配信アプリで出会った彼がいるけれど
彼と話していてたまに思うのは
彼はわたしの感覚とは違う人だということ
人はみんな誰一人
同じ人はいないとか
そういう教科書のようなことじゃなくて
彼はこの世の中に順応できる健康な人で
わたしみたいな精神障害の妄想とかつらいことはわからない
たまに、「あぁ、こんなに違うんだな」って
悲しいこともあるけれど
でも、普通ってなんだろう?って思ったときに教えてもらえるから
助かってるって思うようにしてる
それでもたまにふと思う
この病気が病気じゃなくて
悪い魔法にかかってるだけで
いつかふと治るんじゃないかと
もしくは
わたしは本当に天使だから
いつか人の役に立てるような力が
出せるんじゃないかと
明日起きたら生まれ変わっていたい