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部屋に忘れられたアクセサリー

雨が降る外。
家の中、椅子の背もたれに頬杖ついてボーッとする俺。
目線の先には元カノが俺ん家に置いていったらしいアクセサリーがあった。

あのアクセサリー、確か付き合う前に俺が買ってやった気がする。
ふと思ったけど、俺と付き合ってからの初デートの時にも着けていた気がするな。
ぼんやりとその時の服装を思い出す。

こう思い返すと、あいつってめっちゃ可愛かったな。
俺があの服好きって言ったら次のデートの時似たような服を着てきて、「可愛い?」ってくるって回って。

なのになぁ。

なんで俺、手放しちゃったんだろう。
2年も付き合ってたのにな。

気付いたら他の子と目を合わせて
気付いたらその子と体重ねて
気付いたらその子が大切になって

あいつと重ねた日々を軽々と超えてきたその子に目移りして

一瞬だったその温もりに感染して高熱出して

挙句手放したあいつに今こんなにも恋焦がれてる。

でもさ、感染した熱なんて呆気なくて
彼女がいつつ浮気しているっていうスパイスというか菌が無くなったら途端に引いていって
その子とも連絡つかなくなって

俺は今結局独りぼっちです

笑っちまうね

この可愛いアクセサリーを一つ縛りのゴムの上につけて笑う
そんなあいつの姿を想像してこんなにも涙が出る

なぁ

今でも俺の事好きかな
少しでも思い出してくれてんのかな
別れてから2ヶ月も経っちまってから気付いたけど
俺結構お前のこと好きだったみたいだ
少しでもいいから思い出してくれてたら嬉しいな

そして謝りたいな
お前以外に目移りしちまったこと

ははっ我ながら恥ずかしいぜ
なんだかポエマーみたいになっちまった

フフッと声を出して俺は笑いながら涙を拭う

涙で滲んだアクセサリーがくっきりと見えた時俺は、無意識に机にあったスマホを手に取り、元カノのLINEを開いた。

『久しぶり。今でも好きだって言ったら、どうす』

コンコンッ

る、と打とうとした時部屋のドアがノックされ、母親が入ってきた。

「あ、あったあった。この前買ったやつ。なんでこんなとこにあんの」

母親は目の前にあったアクセサリーをむんずと掴み、部屋の外に出ていった。

…………。

残された俺はスッと「る」を打ち込み、送信を押した。

秒で既読が付き、
『ふざけないで。二度と連絡してくるな』
と返ってきた。

そりゃあ、そうだよな

俺はまたフッと笑い、LINEを閉じた。


もう、ほんと


なんか


恥ずーーーーーーーー


俺はベッドへ飛び乗り布団を被って赤面して泣いた。

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