![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70227384/rectangle_large_type_2_958294068718895d4fb4c98e731fc777.jpg?width=1200)
光
電車に乗る。
座れないことも少なくないので、心して座席を探す。
1つだけ空いていたその席の周りで、人々が目で会話をしていた。
何かあったのだろうかと思いつつも、座れる幸運に胸を撫でて腰を下ろす。
なんだこの違和感は。
座れたのに。
何か周りの人の視線感じるし。
違和感の正体が分かってホッとした。
正面に座っていたサラリーマンのスマホのライトがバッチバチに点いている。
これが夜であれば窓の反射とかで本人も気付くんだろうけど、陽の差す昼間ではそうもいかない。
となると、周りの人々がごちゃついていたのは如何様にして彼に「スマホのライト点灯中コール」をかけるかを議案していたからに他ならない。
んー困った。
いやまぁ対して困ってないんだけど。
このシチュエーションは、火事が起きて人だかりができるほどの騒ぎになっているのに、その場にいる人全員が「誰かが消防車を呼んでいるだろう」と思いこんでしまって、後に誰も呼んでいなかったことが判明するあれによく似ている。
このままだと埒が明かないのでそっと教えてあげよう。
そう思って立ち上がると、ちょうど目的の駅に着いたところだった。
サラリーマンさん。
大変申し訳ないのですが、僕は往きます。
どなたか優しい方に埒を明かしてもらってくださいまし。