最低限の知識さえあれば料理は余裕。かもしれないと思った話。
久しぶりに自分で料理らしい料理を作った。
日曜日。実家暮らしで母親の料理に甘え続けるのも申し訳なく、夕食くらいは何かしら自分で用意しようと思って自炊をした。
少なくとも人よりもご飯は食べているし、外食にも行っている。
クッキング系のYouTubeも頻繁に見ているし、何よりもこれまでのバイトはほぼ全て飲食店だ。
幸運なことに、これまで感覚で作ったご飯が不味かった覚えはない。
レシピなどはない。調味料も目分量。なのにそれっぽい。
我ながらいい腕をしている。
昨日の献立は冷蔵庫の在庫処分を兼ねたもので、
・ササミの中華風野菜炒め
・ササミとズッキーニのラタトゥイユ風
・ササミとお揚げさんのお味噌汁
・ご飯
のササミをひたすら消費するメニューだった。
器用なことに、和洋折衷のそれなりに色鮮やかな献立ができた。
それなりに美味しかった。
じゃあどうして料理そのものの勉強をしていないのに、こんなことが出来たのか。
おそらく、感覚で料理をする前に、最低限の理屈が頭に入っていたからではないだろうか。
そんなことを考える。
別に理屈といっても、麻婆豆腐を作るときに豆腐を何ミリ角で切ればいいのかとかそんなことではない。調味料を何ml入れればいいかとかでもない。
最低限の分量を理解しておけば、あとは何倍かすればどうにでもなる。
そこに、煮る、焼く、蒸す、揚げるくらいを覚えておけばそれっぽいものはできてしまう。
それを教えてくれたのが『料理の四面体』(著:玉村豊男)という本だった。
料理評論家、料理人、ワイナリー経営etc..の食に対するこだわりを持つ彼が書く料理についてのエッセイ。
エッセイだけれど、そこには確立された調理技術が根底にある。
ソースひとつにしても、こんなことが言われている。
実は名前や由緒にこだわらなければ、基本の手順をひとつ知っているだけで、素人にも二〇や三〇のソースの種類はたちどころにつくりわけることができるのだ。いや二、三〇ではきかない、一〇〇、それどころか一〇〇〇種類といっても言い過ぎではないかもしれぬ。これは冗談でも誇張でもない、本当の話である。肉を炒めたあとのフライパンに〝汁〟を入れて油脂・肉汁をこそげ落し混ぜ合わせることをフランス料理の言葉で、〝デグラッセ(霜とり)〟と称するが、デグラッセする〝汁〟のほうはワインでも生クリームでもブイヨン(出し汁)でもなんでもよい。つまりこの〝汁〟を変えることだけでさまざまの種類のソースができることになる。
お分かりいただけただろうか。
これができればあとはどうにでもなる。
肉や魚、野菜を焼いて、そこにワインだったり酒だったり、だし汁だったりを入れてデグラッセすればソースができる。
ワインソース、クリームソース、和風ソース、中華風ソース、マデラソース……
焼いた具材にかければそれでもう一皿が完成する。
焼く具材×油×汁×調理法の方程式に則れば、毎日でもレパートリーが尽きることはない。
これってシンプルなようで極意じみたものなんじゃないのか?
そんなことをこの前読みながら感じていた。
てことは、自分でも最低限これを知ってたらなんとかなるんじゃないのか?
そう思って挑んだのが昨夜の自炊。
ごま油でササミを軽く焼いてから、野菜を投入。鶏がらスープの粉を適当に撒いて、そこに日本酒を軽く入れ、しんなりしたらオイスターソース。調味で塩胡椒を振って完成。
オリーブオイルでササミを炒めて、そこに薄くスライスしたズッキーニを投下。トマトソースを切らしていたから、アミノ酸が多いケチャップを適当に入れて、締まりがなかったから鷹の爪をぽいっと。ふつふつさせて完成。
ニンジンを柔らかくしてから炒めるために鍋で煮ていたところにササミを入れ、お揚げも追加。既に野菜で軽く出汁が引けているから、そこに味噌を足してお味噌汁。
案外料理そのものは簡単らしい。
最低限さえ守っておけば、それなりにそれなりなものが作れてしまう。
逆に、その最低限に対していかに真摯に向き合い、その過程を突き詰めるか。それが飲食店と家のご飯の違いなのかもしれない。
よく考えたら、別にバイト先のパスタも実家のパスタも調理過程は変わらない。
焼かないと柔らかくなるパスタが使われているわけではないし、絶対にミキサーにかけないとパスタソースができないわけでもない。
ちゃんと塩を入れた鍋で茹でて、ソースも具材を炒めてから伸ばして茹で汁で乳化させないといけない。
根本的な調理は同じ。なのにどこか洗練されている。
その違いを外食では楽しんでいるのかもしれないなぁと、今になってしみじみ考える今日この頃。
これからの外食は、技術も楽しめるようになってしまったらしい。
こうしてまた、素直に「美味しい〜!」を言えなくなってしまうのでした。
次の外食はどこに行こうかしら。楽しみです。
ではまた明日。とりあえず、今日はこのへんで。
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