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晴れの日も雨の日も#318 ムジナ などなど

時代劇を見ていて「貴様とオレはムジナか同士か」というセリフに出会った。
ムジナ、ねえ。
久しぶりに聞いた気がして、なんとなく頭に残ってしまった。

漢字で書けば「狢」だ。若い人の中には読めない人が大勢いてもおかしくないだろう。
私はてっきり空想上の動物だと思い込んでいたのだが、調べてみると主にアナグマのことを指すらしい。あるいはタヌキの誤称であるともいう。実在する生物であったにもかかわらず、なんとなく胡散臭いようなイメージがつきまとう気がするのは、民話などではタヌキやキツネと並んで人を化かす生き物として扱われることが多いからか。

さらには、ムジナが一般会話で出てくる機会があるとすれば「同じ穴のムジナ」という慣用句にほぼ限られているといっても過言ではない。一見関係がないようでも、実は同類・仲間であることを指すこの言葉は、だいたい悪事を働いたり悪戯をする人に対して使われることが多い。実際は害獣でもなんでもないのに、ムジナはずいぶん損をしている感じだ。

そんなことを調べたり考えたりしていたら、魑魅魍魎(ちみもうりょう)という言葉が連想された。

魑魅は山林の異気(瘴気)から生ずるという怪物で、顔は人間、体は獣の姿をしていて、人を迷わせるもの。魍魎は川や木石の精霊で、山・水・木・石などあらゆる自然物の精気から生じ、人を化かしたり死者を食べたりし、鬼を思わせる外見だという。こちらはムジナとは違って実在しない妖怪・怪物だ。

「魑魅魍魎が跋扈する」といえば、権謀術数がうごめき何が本当で何がインチキかよくわからないという感じであり、相手を出し抜くことが日常茶飯事の?政界などがその代表格だ。

「ムジナ」も「魑魅魍魎」も言葉としてはあまり使われなくなった令和の時代だが、現実は本当にこうした胡散臭さが消えていって透明でわかりやすく住みやすい世の中になっていっているのだろうか。
世界のあちこちで戦争や紛争が起きている現実は、結局人間のやってることは変わり映えしないんだなあという感じでしかない。いろんな矛盾や分裂がむしろ進展したり表面化したりしているような気がするのは考えすぎか?
ネット社会の進展により、いろんな情報が拡散しやすくなったのは間違いなく、それはオープン化につながる方向だ。が、まだまだいろんな暗闇があちこちにある。そこでは人の形をしてはいるが、健全な人とはいい難いようなものが相変わらずうごめいていそうだ。

魑魅魍魎は人の心が作り出した妖怪だとすると、それはとりも直さず、人の心の中にこそ妖怪が住み着いているということだろう。鬼平等の名著を残した池波正太郎先生は「人の心は善にもなれば悪にもなる」とおっしゃっている。至言だと思う。私の心の中にも天使と悪魔が同居していて、できるだけ悪魔の方は人前に出さないようにしているのだが、時折、ムクムクと動いているのを感じることもある。
冒頭の「ムジナか同士か」という言葉にしても、こうやって考えてみると、ある時は悪事を共にするムジナだが、共に世の中の役に立とうする同士でもありうる、ということかなと思えてきた。せめて人様から魑魅魍魎扱いを受けない生き方をしていきたいと思っている。


(ここまで本文 1,302文字)

前号に続き朝焼けの写真から。朝夕の空は刻一刻様子が変わり、今!しかこの景色はない。
それは人生や人の世も一緒かな。。。

今日も最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました♬ 長井 克之

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