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晴れの日も雨の日も#343 想像・創造

国民的詩人・谷川俊太郎さんが昨年亡くなった。その追悼なのか、12月にNHK ETV特集で「ぼくは しんだ じぶんで しんだ 谷川俊太郎と死の絵本」という番組をやっていた。

絵本編集者筒井さんと堀内さんが子どもの自死をテーマにした絵本を作ろうと思い立ち、谷川俊太郎さんにオファーをする。谷川さんはそもそも受諾するかどうか含めずいぶん呻吟した末に、テキストを二人に送る。

テキストの次は絵だ。イラストレーター合田里美さんの絵に目を留めた二人は谷川さんにその絵を見せる。谷川さんはほぼ即決で合田さんの絵でいくこととし、谷川さんと合田さんの交信が始まる。長い長いやり取りを通じて、絵本が出来上がっていく。

子どもの自死というテーマは重く深く、これはこれでいろいろ考えねばならないのかもしれないが、私は谷川さんのテキストに合田さんが絵をつけていく過程に強く引きつけられた。


まず、谷川さんは「このテーマは無口でなければならない。テキストも。絵も。」という。そして合田さんの絵がそれにふさわしいと感じた。
自死した子の親や、自死を考えている子どもに何かを伝えるには饒舌であってはならない。むしろ「伝える」というより相手が何を「感じとって」くれるかだ。
だから谷川さんのテキストにも「死んではならない」とか「生きよう」などという文言は一切ない。淡々と風景を描くようにひらがなが続いていく。

このテキストから合田さんは自分のイメージを膨らませる。そしてラフイラストを書いて谷川さんに送る。谷川さんから返信が来る。二人で何度もやり取りをしながら絵を作り上げていく。

合田さんは、「テキストに引っ張られて説明的な絵を書きがちだが、谷川さんが求めているのはそうではない」という壁にまずぶつかる。
それは「この子は孤独だから死んだんじゃないか」などというように、自分でその子の死について決めつけないこと。実はなんで死んだのかなんて誰にもわからないものであって、それをわかったように言ったり思ったりすることや、無理にわかろうとすることは違うんじゃないか、ということでもある。

そうして合田さんは、「テキストが言葉として意味するもの」ではなく「テキストから感じられる世界」を絵にしていくようになる。それはテキストの奥にある世界を合田さんが自分なりに想像するということであり、それこそが創造なのではないかと私は感じた。

途中、谷川さんのテキストの一部が削除されて絵だけのページが出来たり、最終的にはそのページに当初とは異なるテキストがつけられたり、さまざまな紆余曲折の末に本作品は完成する。スノーボールがシンボリックな役目を果たし、「宇宙」というキーワードも出てくる。そして抽象性の高い作品が仕上がった。
まさに谷川さんが狙っていた「無口」な絵本だと思う。


私は、絵はからっきしだが、noteやメルマガ等テキストは身近なものだ。まだまだ饒舌で説明的で、相手が自分で何かを感じ取るような言葉が書けていないと痛感した。これは今年のテーマ「深める」にも通底しているように感じている。


(ここまで本文1,260文字)

ヘビのような飛行機雲。珍しい。1/19一粒万倍日のこと。吉兆か?

今日も最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました♬ 長井 克之

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<予定(但し、臨時差し替え頻発😂)
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(つづく)

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