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「音緒のせいで入学式早々遅刻じゃない!」
「え? あかりん、入学式は遅刻がつきものじゃん!」
 高校の入り口。桜並木が並ぶ傾斜のある長い坂道を走っている、朱莉あかり音緒ねお
「マンガの見すぎよ……ああー、もうだめ」
 長い坂を相手に朱莉は息を乱して、その場でへたり込む。すると、強い風が。
「あかりん、見て!」
「えぇ?」
 先を行く音緒を見やる。
 すると、これが運命であったかのように風に踊る桜たちが、音緒を歓迎していた。
「きれい……」
「うん。春が、わたしを包んでる。響けって言ってる。あかりん、急ぐわよ!」
「ちょっ、ねぇ、まってよ、音緒ーっ!」
 ハルの音が、音緒の鼓動こどうを強くする。
 ――音が、学校が、みんなが、わたしを待っている。

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