サヨナラババァ6

サヨナラババァ(6)

差押えの一報から、東京へ戻りKの事務所にいった。
Kの事務所の中には法務関係の本や、様々な石がいくつもあり、セメントで作られたコンクリートボックスのテスト壁などが山積みされていた。中には、「汚染土」の放射線無害化実験もやってたりもした。事務所の放射線を計測すると少なからず反応してたと思う。他にも除染した土を運ぶフレコンバックのサンプルや、防護服のサンプルなどまるで「311百貨店」か?というぐらいいろんな商売が並行して動いてた。 

(Kの事務所で防護服を着る。まさかこのあと何回も着ると思わなかった)

Kの人物像がどんなものか、ここで少しKの面白エピソードをいくつか紹介したい。たぶんこの話しを知ってるのはそこまでいないだろうし、どこかのジャーナリストもここまで深く知らないはずだ。

Kは青森県出身で母親が女性初の警官だった家庭に生まれKは酪農を学問を学びその後いろいろあり過ぎて、とある経済事件の中心人物になる。そこまでの過程で、興味深い『』のような物語がある。彼を一躍有名にしたのは、Pカードの偽造だ。パチンコで玉を買うあのPカードだ。

彼はプログラマーを囲い偽造に試みたのだがなかなかうまくいかなかった、最終工程において磁気カードのプリンターが必要になり本物が必要になった。その時、阪神大震災が起こり神戸にあるパチンコ屋からそれを強奪して偽造Pカードを完成させるのだ。

この話は最初に依頼してきたのは、人形町にあったパチンコ屋からの依頼だったというのでなかなか昭和混乱全盛の話だなと思う。そうして偽造Pカードが流通して財を成す。震災のドサクサ紛れのビジネスって言う意味では今の会社もそうかもしれないと僕はこの思い出話を聞いて人は業の深い生き物だなと思った。
もう一つ、彼は北朝鮮の万景峰号がくるたびに、トランジスタICを北朝鮮に売っておりその時の北朝鮮関係の仕事をしており外交パスを持っていたそうな。

ババァがKに僕が似ているという点は、この話2つだ。
「ゴキブリのようにしぶとく知恵をつけて生き抜いていくあたりがそっくりだ」と言われた。

Kにババァが質問した
「あんたが、金なくなってポケットに500円でも千円でも小銭しかなくなったらどうする?」
「ブローカーのいる喫茶店にいって、ネタを見つけて仕事にする」

僕も同じ答えかもしれない。

金がなければ誰かと話てキッカケを考える。
おそらく今日仕事を失っても恐怖はない、0から作り出すだけだから。

Kの事務所にあるいろんな書類やサンプルに正直ワクワクしていた。
久しぶりに頭を使う商売にありつけたと思った。

しかし、家賃を滞納し480万ほど飛んだ、出資した金全部だろう。
追加差押えで、強制退去がすぐに始まる事務所を移転させなければならないが顔の広いKはすでに新橋に当てをつけており移転を決め込んでいた。

とにかく金がない連中が毎日たくさん出入りしていたし、Kが金を借りてる連中が毎日のように取立てにきていた。案件が多すぎて僕も把握しきれなかった。

まずは当初の予定どおり、「コンクリートボックス」の案件をクローズすることが急務だと思い様々な段取りを組んでいく。 

案件の成否は、利益を得ることにもちろんあるかもしれないが「誰にも知られない利益」を作り出すことにあると僕は思っている。

利益を可視化すると皆が手を伸ばしてくる金に汚かろう綺麗かろうが関係ない分配されることにより不平不満は派生する。

人をつなぐだけでは商売にならない、『スキーム』を作りだすことでしか僕らは利益は産めないわけだ。大概の連中が人をつないで終わりになってしまうところを、『場』をつくるのに銭金を作り使う奴しか発言は許されない。でもなによりもちゃぶ台をいつでもひっくり返えせるだけの権利をもつことが重要だ。その上で「誰にも知られない利益」を確保してこそ仕事だと少なくともババァにそう教えられた。

短期間でこの仕事を終わらせるのに資金が限られていた。
どうやりくりしても五千万円程度の資金がかかる。

ましてや、最終的にコンクリートボックスの採用は福島県や政府の仕事だ。
開発した爺さんは、夢見ているがおそらくそんな結果に終わらないだろうと僕は予想していた。

素材は地産地消で福島県の汚染土を詰めたフレコンバックのある場所からほどなく近い場所で製造しなくてはならない。

その条件に当てはまる場所はたった1箇所しかない。
その場所にある、過去に稼働してた採石所を取得しセメント工場へ搬出する”可能性”を作ることだ。 


以前にあった熊本の会社から出資を出させる為に国土交通の元大臣で中堅上場会社のセメント会社と会合を持たせることにして、その足で福島の採石所でクロージングをかけることにした。

膨大に毎日金が出て行くことが予想されたが、これも長年の感で、常に『失敗すると考える』ことにしている失敗した時に、やり直せる金と仕事を残すのがくせになっていた。

これが失敗したらやるべき案件は、北九州の「中間処理場」だ。
そのための種銭を沈めておく必要がある、金に変わるものへ沈めておくことによって何倍にもレバレッジがかかるタイミングが案件にはある。

人は「貧すれば鈍する」わけだ、100万貸してくださいときて、『いや貸せないどうにか頑張ってみて』といって突き放して相手が60万集めてきて『40万残りどうにかできないか?』ときたら、初めて自分の条件をいう。金利を取るのは意味がない、3倍もしくは5倍相当の価値にかわるなにか変えるのがいい。それでもまだ貸さない、『残り20万なんだお願い!』と言われて、初めて貸してトンズラこかれても痛くない金額まで下げさせて、労働込みの条件を提示したほうがいい。20万分働いて稼がせるのはそんな難しくないのでいい暇つぶしになる。

さぁ、2月初旬丁半博打のキャンペーンが開始される。
鞄から現金が次から次になくなっていくなくなっていく。飲み食い要員太鼓持ち要員事業ベシャリ要員運転手4名場面の食費や旅費や料亭の金が事前の計算どおり出て行く。

こんな工程の金を一円単位で計算するのが僕は大好きだ。気持ちがいい。

福島県のとある山奥、原発から25km内にその場所はあり、街道を隊列をなして4台の車が走っている。

この時点で僕は一度もこの現場に行った事がない。

唯一の丁半場面だとおもった。

1月中から2月前半のこの日までに時間が足りなさすぎた。福島へ何度も往復してる暇などなかった場面を組むだけで精一杯だった。

人の姿見えない荒涼とした場所をダンプカーがなんどもすれ違う。

この仕事の最中に、僕はほとんど無駄口を叩いたことがない。

採石所に着いた。
地層をプロが見る、熊本の会社の会長はプロだ。

何も話さず採石所を歩く。

僕は感触を知りたくて横につき

「会長、僕は素人でなにもわからないですがこんな石が役にたつものなんですかね?」
「あぁ、あっち見てみなさい。」

顎でさした先に地層が色が変わってる部分がずーっと連なっている。
この地層でとれる特殊な石が放射線のブロックには不可欠だと開発者は説いている。
しかしこの地層の先に、同じく採石所があり1時間に4台ぐらいのペースで運び出している。
別のゼネコンがここから先にあるセメント工場へ持って行ってるのだ。

この時点で、僕の丁半博打は負けを覚悟した。

帰りの車に乗る前の間に、引けを最小限にしなければならないと考え始めた。完全に血の気が引いて、くらくらする。

僕の調査不足だった、Kの片手落ちの仕事よりも時間がかかりすぎて他が稼働を開始してしまったのだ。わずか2週間前に稼働し始めた採石所だった。

五千万が一瞬にして消え去ったと感じた。

つづく

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