重力と呼吸 / Mr.Children
すっかり聴くのが遅くなりました。それほどミスチル・ファンではない私です。でもミュージシャンとしてのミスチルを尊敬してるので、作品は一通り全部聴いてます。今回の新譜はCD販売のみで、配信もされてなくて、聴くのが遅くなってしまいました。(CD買ったのか?って・・・すいません、レンタルしました・・聴ければなんでもいいんで。)
▪️4人で奏でるバンド・サウンド
今回のアルバムはこれに尽きるかと思います。そのせいか一つ一つの曲が「若い仕上がり」に感じます。要はコバタケさんを卒業し、極力4人で考え、演奏を作ってきたのかな?と思えるアレンジが多いように思えます。
殆どの曲が「一発録りに近い、生演奏そのままのアレンジ」に感じます。あえてそうしてるのだと思います。それが「4人のバンド・サウンド」と印象付ける理由かと思えます。
アルバムとしての曲を録音するのも、パート毎に録音していくというよりは事前にバンド・リハーサルを重ね、アレンジも決めた上で、アルバム用に演奏&録音という手順を踏んできたのかな?という印象です。
このやり方だと、事前にアレンジし、リハーサルを重ね、その後にアルバム・レコーディングの演奏という流れになり、アルバム録音に至るまでに相当時間を要するのでは?と思えてしまいます。(あくまで想像です。)
そのせいなのか10曲というのも、十分にリハーサルを重ねて、アルバム収録という手順だと、時間的にも多くの曲を作り出すのは難しいかな?とも思えます。(全部、勝手な想像ですが・・・。)
▪️生演奏そのままの雰囲気をアルバムに落とし込む
これまでのミスチルのアルバムと決定的に違うのはここかなと思います。どの曲も「一発録り」に近い音。「生演奏をそのまま録ったようなサウンド」なのです。
これが今回のアルバムの狙いなのかと思います。「曲の仕上がり」としては「どこか不足感」を感じる部分もあります。でも今回、ミスチルが新たな手法として目指したのが「生演奏感覚」をそのまま作品として落とし込んだのは、一つの挑戦なんだと思います。
この「生演奏」っぽさが、人間味のあるサウンドとなってるし、どこか未完成感も含め、4人の共同作業感のある作品になってるんだと思います。
一曲目の「Your Song」のドラムのJENのカウントの叫びもそのまま録ってるのは「生っぽさ」にこだわってる、その部分の「宣言」なんだと思います。
▪️新次元へ進化した曲
今回のアルバム前の既出の曲を含め、ミスチルがこれまでから進化して、新次元の曲へとの「進化を感じた曲」が何曲かあります。それは「here comes my love」「秋がくれた切符」「himawari」が特にそう感じました。
メロディの完成度は「桜井メロ」として進化・完成の領域にあります。曲がメロディ先行で作られた印象です。メロが曲を支配してる典型。桜井ワールドがメロディで作られてる高レベルな曲です。
「here comes my love」「himawari」は特にドラム、ギターがこれまでになく、メンバー自身が自分のパートにしっかり責任を持って、音を作り出してるのがこれまでとは決定的に違う印象を受けました。「here comes my love」の田原さんのギター・ソロが曲間に入ってたのは「驚き」でした。きちんと自分で「間奏」として、ギター・ソロを作曲して弾いてるではないですか。これには驚きました。4人がしっかり曲作りに参加してる証拠です。
▪️アルバム・バージョンの「himawari」
「himawari」がアルバムVer用のアレンジに変わっているのも、すっかり余裕です。先行シングルから時間も経ち、アルバム制作時点では演奏もこなれていたんだと思います。新たな気持ちで新アレンジで撮り直してます。ドラムもシングル盤からすっかり演奏も変わり、曲のパートに合わせて、より表情をつけるような演奏に変わってます。これは両方聴く価値があります。
(気のせいか「here comes my love」も撮り直した演奏な気がします)
もう一つ驚くべき事があります。ピアノが入ってません。
ピアノなしで楽曲を支配するメロディックなコード感を出す事に成功してる点は特筆すべき部分です。これはメロディ&ベース&ギター&アコギに寄る、音の分散アレンジによる「コード感」の演出に成功してるのです。
おそらく曲は最初、ガイド的にピアノはあったはずです。最終的に抜いた状態にしたと思われます。これが成功してる要因は「旋律の美しいメロディ」によるところが大きいです。このメロディがすでにコード感を伝えるメロディとなってるので、それを補足するベース&ギターで十分なのです。
これだけメロディアスな曲を「ピアノなし」で完成させてるのは非常に高次元な楽曲であると言えますし、このアルバムで1、2位を争う完成度と言えます。
▪️このアルバムの楽しみ方
アルバム全体で聴くと、曲の好き好きはあるかと思います。でも4人でしっかりアレンジし、生演奏に近いバンド・サウンドを感じる事で、4人がアルバムの随所でしっかり「演奏で声を上げている」のを感じると楽しめます。
4人がしっかり曲の随所に存在しているのを感じます。特にJENのドラムが生演奏そのままで録られてる音が生のグルーブを生み出してて、音が生きてます。このLIVE感は今回のドラムの録り方による部分が大きいです。
ですので「LIVE感のある生演奏を封じ込めたアルバム」として楽しむと、これまでのミスチルのアルバムとは全く違ったものであることに気づくのではないかな?と思います。これまでのミスチルのアルバムの中で一番「LIVE感」のあるアルバムではないかと思えるのです。
そう考えると、この「LIVE感」は10曲位が丁度良く、再び聴きたくなる曲数なんだと思えたりもします。
P.S
アマゾンのレビューも賛否あるですね。