【料理エッセイ】カレーはじめは横須賀の猿島で！ 東京湾の無人島はジブリっぽい雰囲気にあふれていた
年明け、横須賀に住んでいる友だちに会ってきた。まだ三が日だったのでさすがにお店もほとんどやっていなくて、
「どこ行こうかー？」
「無人島どう？」
「無人島！」
と、アホみたいな会話して、東京湾で自然林のある最大の無人島こと猿島に行ってきた。
さて、無人島と言うと人がほとんどいないような気がしちゃうけど、かなりの観光地なのでフェリーでたくさんの人が往来しているし、ビジターセンターもあるし、カフェもあるので寂しくはない。ただ、人は一人も住んでいなくて、横須賀市の条例に基づき16時には全員退去しなきゃいけないことになっているとか。
そんな説明を聞きながら、本気で居残ろうとした場合はどうするんだろうと気になった。一応、フェリーに乗るとき、スタッフの方がカチカチ押すタイプのカウントで乗客を数えていたけれど、まさか帰りに照合したりはしないだろう。たぶん、草むらに隠れて最後の見回りをやり過ごすやつがいたとしたら、見逃してしまうに違うない。
ただ、上陸してわかったのはそこまでして滞在するような島ではないということ。普通に狭いし、軍事用の設備が廃墟となっているだけ。生活はしていない。
あくまでたまに行くのがいいところ。
散策するにはめっちゃ楽しかった。明治以降の建築でも珍しくフランス式のレンガの積み方(フランドル積み)を採用しているらしく、独特の懐かしさにあふれかえっていた。それこそジブリの『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』みたいな雰囲気。いわゆるインスタ映えはばっちりだった。
砲弾を収納していた通路を歩いて行くとトンネルがあり、そこを抜けると高台に古びた塔がある。そのふもとには砲台の痕跡が。幕末から太平洋戦争の終わりまで、この場所で海からの攻撃に備えていた人がいたんだと考えると自分の隣に歴史が立ち現れてくるような気がする。
ペリー来航で西洋が海からやってくると恐れて、猿島で撃退すると決めた人がいたはずで、結果的に飛行機による攻撃が主流となったため、一度も実戦には使われことはなかった。ここで働いていた軍人さんたちも意味のないことをしていると認識していたような気がする。それでも仕事だし、毎日、せっせっと砲弾を運ばなきゃいけない日常でなにを考えていたのだろう？
戦後、猿島は横須賀軍港とまとめてアメリカの管理下に置かれた。1947年にはフェリーが渡され、1957年には海水浴場として使われ始めたらしい。この島はそういう顔の方が似合っている。
日本に戻ってきたのは1961年。長いこと大蔵省が所有していたが1993年に海水浴場を閉鎖。渡航も禁止されてしまう。
1995年に横須賀市が管理を受託し、観光地として再び活用し始める。2003年には国から市へ無料譲渡が行われ、現在の体制になったという。夏にはドローンで食料を運ぶなど実験的な運用もされているようで、実はけっこう面白い場所なのだ。
ぜんぶまわっても一時間はかからないので、サクッとアドベンチャー気分を味わえるのがとてもいい。その後はビーチの側にあるカフェで食事を堪能すれば、完璧な休日となる。
わたしたちはカレーを食べた。さすがは横須賀。ちゃんとよこすか海軍カレー三種の神器であるたっぷり野菜・サラダ・牛乳がそろっていた。
お正月だし、昼間からビールも飲んだ。風は冷たいけれど、太陽のおかげで寒くはなかった。穏やかな波の音を聴きながらお腹を満たすとこのまま眠ってしまいたくなる。
横須賀に戻ったあとは「もう少し飲みたいね」ということで、ヴェルニー公園にあるイタリアン「アマルフィ」が開いていたから、前菜で白ワインを頂き、パスタで締めた。
こんなんいいに決まっている！
地元の野菜や魚がたっぷりで贅沢にもほどがある。イタリアンだからってイタリアの食材じゃなくてもいいんだよね。その土地のものを使って作るイタリアンこそ至高のイタリアン。と、海原雄山みたいなことを考えながら、お節で和食に疲れた舌先をオリーブオイルで癒し尽くした。
食後は近くのコースカというショッピングモールへ移動。エスカレーターで上にのぼりつつ、いくつかのお店で買い物をした。最上階にはボーリング場があり、ピンの倒れる音だったり、歓声だったりに触発されて久しぶりにやってみようかということになった。
お互い、一投目がガーターなあたり、どうしようもない。順番に「やったー！」と「ウソー！」を繰り返しつつ、似たようなスコアで泥試合を重ねた挙げ句、最終的には僅差でわたしが勝利した。意外にもけっこう白熱した。
駅前でサヨナラをして、京急に一人乗り込んだ。窓の外、流れる景色をじっと見ながら、
「さあ、今年も頑張ろう」
と、自分で自分に鞭打った。
マシュマロやっています。
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