なぜ?を大事にすることが学びのはじまり

 前回のnoteではJBAコーチ養成講習会で学んだ一部のことを書きました。本日はその続きです。

Always start “Why?”.「すべては“なぜ?“からはじまる」。

 最近では書籍、コーチングビデオは勿論ですが、SNSを通じて技術書やプレーブック、上手いプレーヤーたちのプレー集をよく見かけます。私も情報収集の一つとして活用していますが、ただ試合を観るだけだったり、そっくりコピペするだけでは自分の武器にはなりません。そのまま完コピしたところで、形だけ覚えたとしても、試合では中々使えないのです。自チームの選手たちの個性や能力に合わせた形に落とし込んで行くことが本当に大事になります。
 私も過去にUCLA、NBAで使われたセットオフェンスをそのまま覚えて選手にアウトプットしたことがありましたが、試合では中々選手たちの成功体験は積めませんでした。そこで抜け落ちていたことが、「なぜ?」です。

・なぜ?ドリブルスキルがゲームで使えるのか?
・なぜ?ディフェンスが対応したらオフェンスはこう動く(スクリーンなど)のか?
・なぜ?このチームのヘッドコーチはこのセットオフェンスやディフェンスシステムを採用しているか?
・なぜ?Aチームのコーチはタイムアウトを取ったのか?
・なぜ?Bチームのコーチは選手に厳しく話しているのか?
など…

つまり「なぜ?」ということを考えずに、NCAAでやっていたから、本に書いてあったからなど、すなわちプレーヤーたちの能力や感性、そして感情を観察せずに見よう見まねで型から覚えてプレーヤーたちに伝えることを必死にやっていました。それでは上手くいかないことは明確ですよね。そんな苦い経験が今の自分をつくっています。
 バスケットは同じプレーが現れることは二度とありません。SNSでNBA選手のプレー集を見るにしても、「ディフェンスがどの位置にいたから、このドリブルのスキルを使ったのか?」、「なぜ?シュートフェイクを入れたか?」など、オフェンスがディフェンスのポジションやビジョンをどのようにコートの中で把握してプレーを瞬時に判断して選択しているか?「なぜ?」と考えながらゲームを観ることが出来ると視点が変わります。またオフェンスとディフェンスは表裏一体ですので、ディフェンス目線でゲームを観るときも逆の立場からゲームを観ると違ったバスケットの見え方が出来ます。勿論NBAなどバスケットのゲームは観るだけでも楽しいですよ😄

GROWモデル

 講習会の一部で学んだところですが、GROWモデルについて説明します。

・G(Goal)→目的、目標、課題などに関する質問。
 例:「今日の目標や課題は何かな?」、「何をテーマにしてやってみる?」

・R(Reality)→実際に何が起こったのかに関する質問。
 例:「実際にやってみてどんな感じだった?」、「この場面ではどんな風に感じた?」など。

・O(Option)→改善に関する様々な選択肢を確認する質問。
 例:「その他にどんな選択肢がある?」、「変化させられるところはどこだろう?」など

・W(Will)→次に実施する際に何を行うかを確認する質問。
 例:「次は何をやってみる?」、「次に変えてみるところはどこ?」など。


 GROWモデルを活用して普段の練習を進める場合は、以下の流れが考えられます。

<コーチ>
①練習のはじまり…「Goal」練習の課題をプレーヤーと共有する。

②練習中1…「Reality」プレーを評価したりプレーの感触などを確認。

③練習中2…「Opition」必要な場合は軌道修正したり次の選択肢を確認。

④練習のおわり…「Will」次(明日以降)の課題や練習内容などをプレーヤーと共有する。

 コーチがプレーヤーに伝えるときに大事にしたいことは、「なぜ?この課題や練習を実施するのか?」を説明できることです。これで今日の練習の約85%は決まると言ってもいいほど課題設定は大事です。それは「今日のゴールは何か?」を明確にすること。プレーヤーが思い切って課題に取り組める場面づくりや準備が必要です。その根幹になる部分が「なぜ?」になります。「なぜ?」の部分や課題やゴールが明確でないと、違う方向性に練習が進んだり、プレーヤーから的外れな意見が出やすくなったりするため、お互いに苦労することになります。

いいコーチは「プレーヤーに適切な課題を与え続けることができる」こと

 いいコーチはプレーヤーたちに普段の練習から適切な課題を与えることに長けている方が本当に多いです。すなわちプレーヤーに「最適解」は何か?をプレーヤーに考えさせることが上手です。それは試合に勝った負けただけに囚われないプレーヤーたちとの関わり方を一番大事にしており、とても学びになることが多いのです。
 「適切な課題」をプレーヤーたちに与え続けることで練習の負荷をかける調整やチューニングすることが出来て、プレーヤーたちの「わかる」「できる」を増やせると思います。そしてプレーヤーたちの練習意欲を引き出すことにもなります。
 ゲームで勝ったときも嬉しいとは思いますが、プレーヤーたちは練習でやってきたプレーがゲームで使えるようになると面白いと感じるはずです。バスケットは相手がいないと成り立たないスポーツですので、レベルが高くなればなるほど中々自分が気持ちよくプレーできることはありません。それでもスポーツも学校の勉強と同じように、分からなかった問題ができるようになったり、テストで答えがわかったときの快感を味わうことができれば、喜びが倍増します。こうしたチャレンジを目の前の選手たちと共に普段の練習から取り組んで、ひとりでも多くのプレーヤーにゲームで成功体験を積んでほしいと願っています。それがバスケットの面白さを味わうことが出来る道標になると信じてプレーヤーたちと関わっています。

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