日常の詩的なリズムにのる。”君は魚になりたいかい?” 映画「パターソン」★3,5
ニュージャージー州パターソンに住む、バス運転手のパターソンの何気ない日常。
2016年 米 118分 「Paterson」
監督ジム・ジャームッシュ
とある1週間の日常。そのリズム。マクロで見ると毎日は同じようだが、ミクロで見ると、それはまったく同じではない。毎日が新しい。瞬間が新しい。特に派手なことは起こらない愛すべき日常。
全体的に地味というか、静謐な雰囲気に包まれている。時に、ちょっとした出来事で不穏な空気が流れるが、それも僅かで、けっこう所々クスッっと笑える場面も多く、穏やかな感情が心に広がる。
毎朝同じくらいの時間に起き、ローラにキス、歩いて出社して、ドニーの悩みを聞く、乗客の話を楽しんだりする、帰宅して傾いたポストを直す、ローラの話、マーヴィンの散歩、Barでビールを一杯。これがパターソンの日常。
このような日常の合間に、詩作に耽るパターソン。どこかに発表するわけでもなく、ただただ詩を創作する。いろいろな人の会話の中で、何か感じる言葉から、インスピレーションを得ているようだった。
単調な毎日で、愛するローラには主導権を握られてるようだし、愛犬マーヴィンはあまりなついてるようには感じないし、それで満足なのだろうかと、ふと疑問に思ってしまうのだが……きっと幸せなんだろうな。
どうもパターソンは、欲があまり無い人なのだろう。特にこれといってこだわりがないから、とりあえず現状のまま、詩が創れればそれで良いのかもしれない。穏やかな人柄だが、さすがにノートの件はショックだったか。
「お前なんか嫌いだ」とマーヴィンに言ってたけど、実は、怒ったローラが閉じ込めたのを助けたりしてて、優しさがすごい。が結局またローラに閉じ込められるマーヴィン…どんまい。ポストの件とかかわいいぞ。
そういえば作中に「対」の要素が、頻繁に出てきてたけど、どういう意味合いがあるんだろうか?町と同名のパターソン、二人組、特に双子がやたら出てくるし。二つの話や、ローラのモノトーンもか?
ラストに永瀬正敏さん出てくるの、嬉しかったな~。重要なシーンだし。でも、あの「アハー」の繰り返しの意味が、よく分からない笑。あとついでに、工藤夕貴さんも出てきてくれたらだいぶ熱かったけど。