。奇譚。マンガ「魔女」五十嵐大介 ★4,5
2003年~2005年 五十嵐大介 全2巻
むかし、
魔女がいた。
--- 第1集 ---
「SPINDLE」
-あらすじ-
トルコ?「首都」イスタンブール?30年前、男に振られた女ニコラの復讐が始まる。そして、首都から遠く離れた地の遊牧民の少女シラルは、伝言を伝えに首都へ向かう。
-感想-
恐ろしや、女の恨み。ニコラみたないなの実際いそうだし、黒魔術?嫉妬からの恨みが多いというのを、何かで見た気がするが、そんな感じか。ブラックマジシャン。シラルはホワイトか。もしくはナチュラルか、よく知らないが。あと、鳥がよく目についたが、何か魔女とのつながりでもあるのかな。二コラによる邪悪で恐ろしいマジックからの、シラルの家族のぬくもりは超ホッとする。
-調べ-
イスタンブールの「グランドバザール」は有名みたい。アニス酒は「ラク」というトルコの酒で、一緒に食してた羊頭の丸焼きもトルコ料理で有名みたい。羊が多いのか。
最後の方の舞台は「イスタンブール歴史地域」。土俗信仰の嵐の神「ウォーダン」の話してるとこは「アヤソフィア」?そして、地下宮殿「バシリカ・シスタン」?ちなみに、ウォーダンというのは北欧神話のオーディンみたい。独語でウォーダン。
あと、「光輝の書」はユダヤ教神秘思想(カバラ)の中心となる文献、「抱朴子」は、晋の葛洪の著書で、神仙術なんかの説があって、道教に強い影響を与えたものらしい。気になる~。
「KUARUPU」
-あらすじ-
アマゾン。白人による開発の手がのびる、森(ジャングル)。そこに住む原住民の反抗。戦いの為、「精霊の家」に籠るクマリ。
-感想-
見えないものが見えたら、あんな世界だろうか。精霊の世界。恐ろしくも神々しい。この物語の端々に、様々な生物がいたが、もしかすると、人間以外の生物には見えているのかもしれない。遠い地の悲劇を、何も知らず、食い物にしている先進国というのは、多くの面で問題となるテーマだね。でも、あれだけの精霊の力でも、負けてしまうのか。空爆がまた印象的。
-調べ-
「チュチュワシ」は、アマゾン産の巨木で、樹皮の酒。「トエ」は、幻覚性植物。「ロプーナ」は?似たようなものか。「アヤワスカ」は、幻覚剤となる蔓植物。
巨大な「ルプナ」は、やはりアマゾンの人にとって重要そうな木。「チュヤチャキ」は、Chullachaqui?これは、小さな悪魔のような小人らしい。
KUARUPUは「弔い」。
「騎鳥魔女」
-あらすじ-
超短編。中国のどっかかな?干しトウモロコシ、お茶。神父達?亡くなった妹。予言「大きな力のある石が降ってくる」
-感想-
見える人と見えない人ているんだろう…。
-調べ-
「検邪聖省」は、そういう異端審問所?があったみたい。教皇庁の一機関。
--- 第2集 ---
「PETRA GENITALIX」
-あらすじ-
ヨーロッパ。北欧。孤児のアリシアは、「大いなる魔女」ミラの家族となった。1年後、宇宙で活動していたカッセル飛行士に「石」が衝突。治療の為、地球に帰還したが、「石」は地球上で目覚め、様々な生命が生まれてしまう。
-感想-
ミラ先輩カッコいいっす。「大いなる魔女」らしい生き様。「魔女は考えないの。ただ知っているのよ。」のあたり感動。素晴らしい。ほんと、魔女というのは、聖女と紙一重。というか、一緒なんじゃないかと。そして受け継がれる「大いなる魔女」。100頁程の作品とは思えない充実感。
-調べ-
来訪神「クランプス」は、鈴の音で旧年の悪を払う、と。クリスマス頃?サンタさんの相棒らしい。ヤギ悪魔の姿。「燻し十二夜」は、死者の霊が訪れる、と。ゲルマン世界でクリスマス前後のお祭りらしい。古代の神聖文字「オガム」は、アイルランド近辺関係か。
1909年、バージェス山(カナダ)で発見された化石群(バージェス|頁岩<けつがん>)、カンブリア・エクスプロージョンは、およそ5億年前に生命大爆発「全くでたらめに見える姿で、ほとんど子孫を残せず絶滅、進化の流れから外れた生物」(ミラ)
「トルテ」Torte は、独語で焼き菓子・ケーキ系。「カフェ・ミットシュラーク」は、カフェー・ミット・シュラークオーバース?、コーヒーカップとは別の器に砂糖をかけたホイップクリームが添えられているもの、これかな。
「生殖の石」に関しては、検索で出てこなかったから、創作?分からん。
「うたぬすびと」
-あらすじ-
空っぽのJKひなたは、学校でなんとなくお金を盗み、親戚のユージと旅に出て、船に乗る。そして、船で出会った不思議な女性・千足に聞いた島に行くことに。目覚めの旅。
-感想-
結局、千足とユージは響き合っちゃったのか。千足の死んだ婆ちゃんの話し、そこと同じ場所で新しく命が生まれると、その後に、月にいる婆ちゃんの描写があって、ひなたは利用されてしまっただけなのかもと思った。千足が魔女なのか、婆ちゃんが魔女なのか、その家系なのか。ひなたがかわいそうな気もするが、これはこれでよかったような気もするし。
この作品には結構影響を受けてる気がする。知らず知らずに。島に行くことが多かったから、何か拾うとき思い出す。そしてそして、ハーモニーを崩してしまってるんだろうか。その場所も、自分自身も。世界と一体になれるのであれば、その感覚を味わってみたい。本当の意味で世界の一部となって、良きリズムの中で生きたい。
でも、ひなたっていい名前だな~。
-調べ-
リズム rhythm は「古代ギリシャの言葉で、世界を構成するアトム(原子)の動きを説明する言葉で、世界のすべてはアトムからできてるから、何にでもリズムがある。(ユージ)」
調べると、ギリシア語リュトモス rhythmos に由来。普通の説明のとこには原子的な語がなかったけど、↓のことが参考になりそう。「自然と形成 ーデモクリトスにおけるリズムの問題ー 山下尚一」
「ビーチ」
-あらすじ-
超短編。沖縄?島。いなくなった猫を探しに、ビーチへ。おばあ。流されたものが最後に流れ着く場所。
-感想-
ビーチのおばあが、奇妙だが何かかわいらしい。
-調べ-
ピシャーマ(娘さん)、マヤー(猫)は沖縄の方言か。抜け道の神様、ビーチの神様。キラ雨お天気雨。
改めて読むと、やっぱめっちゃ好き。この中で言うと「PETRA GENITALIX」が抜きんでてるよな~。その他も好きだけど。ドタイプ過ぎる物語構成、不可視世界の表現も。世界の真を突くようなセリフにも打たれる。絵は上手いとは思わないけど、凄みのある漫画。アニメでも観てみたい!
ということで、最高です!!!
五十嵐大介さんラブだからな笑 しょーがない^^
大満足!!!
その他、五十嵐大介さん作品記録。↓