『精神現象学』 ヘーゲル 著 ・ 長谷川宏 訳 (作品社 1998)
力なき美意識が知性を憎むのは、
自分にできないことを知性が要求するからだが、
死を避け、荒廃から身を清く保つ生命ではなく、
死に耐え、死のなかでおのれを維持する生命こそが精神の生命である。
精神は絶対の分裂に身を置くからこそ心理を獲得するのだ。
精神は否定的なものに目をそむけ、
肯定のかたまりとなることで力を発揮するのではない。
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精神が力を発揮するのは、
まさしく否定的なものを直視し、そのもとにとどまるからなのだ。
そこにとどまるなかから、
否定的なものを存在へと逆転させる魔力がうまれるのである。