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#15 世界の危険思想

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丸山 ゴンザレス(2019).世界の危険思想──悪いやつらの頭の中── 光文社新書

本書概要 from 光文社

人が人を殺す理由は何なのか――。
著者の丸山ゴンザレス氏は、世界中の危険地帯の取材を続ける中で、日本人の常識とは相容れない考え方に出会ってきた。
仕事だから作業のように人を殺す、金持ちからは奪ってもよい、縄張りに入った奴はすべて排除する。
そんな、教科書には決して載らない「危険思想」を自らの体を張って体系化。
悪いやつらの頭の中に迫る!

本書感想

本書に対するレビューとして「内容が薄い」という指摘を目にした。

確かに薄い部分があるのは否めない。「こういう話を聞いた」「こういうことを体験した」「こういうことをその時に感じた」という内容しか書かれていないからである(それ以外の部分は著者のジャーナリスト体験を踏まえた著者自身の考え)。

でも,この「薄さ」こそが本書の強みなのではないかと思う。確かに「深く突っ込む」ことはできたのかもしれないが,本書で紹介されるような危険地域で深く突っ込むことは死に直結する。死んでしまったら聞いてきた話を披露することさえできない。「危険思想」の「入り口」にさえ立てないのである。

本書は「危険思想」を深くえぐり出すことを目的にしたのではなく,その「入り口」を見せるために書かれたと考えれば本書の意義も見えてくるように思う。多くの人は出会えないような危険なやつらから様々に話を聞いてきているのである。

また,著者は実際は深く突っ込んだ体験をしている。たとえば,自分で銃の売買の体験をしている。しかし,この体験に対しても「薄く」書かれている。著者はあえてあまり深追いや考察をせず,体験の紹介を意図しているのではないかと思える。

確かに「自分語り」が少しある部分もあるけれど,それを差し置いても,普段は触れられないような人・場所の話を著者の強い解釈を入れずに書いてもらっているというのは,読書体験として貴重であるように思う。

このような体験・経験を踏まえた氏の「深い」考察がいつか聞けることを楽しみにしている自分がいる。

(以上はInstagramの再掲)

ページ数から見る著者の力点

本書は9章から構成されていました。各章のページ数は以下の通りです。

世界の危険思想

第7章「なくならない非合法ビジネス」のページ数が最も多く30p,第5章「本当は危ないセックス」が次いで28pでした。

第7章は最も衝撃で,自分で武器商人と交渉した話,その時に撮影した武器(銃)の写真が載せられています。どの現場でも多少は命の危険に遭遇しているのだと思いますが,第7章で紹介される話は,より命の危険が大きい話であり,その結果,ページ数が少し増しているのかなと思いました。

第5章のページ数が多いのは,取材者として著者が性産業を利用するためかと思います。「女の子と一定時間密室にこもることになれば,いやおうなしに会話が生まれる。そこで情報収集もできるということで,多用する手段になっている。」(p.71-72)。世界中で性産業が色々な「危険地帯」につながっている,当然なのかもしれませんが,改めて驚くべきことだよなと思いました。

*目次*

─ はじめに
第1章 人殺しの頭の中
─ 人類最大のタブー
─ 殺し屋の住む部屋
─ 殺人の依頼者の素性
─ 気軽に殺しを頼む人
第2章 命に値段はつけられる
─ 殺しの動機
─ 在比邦人は誰に殺されているのか
─ 金が人を殺しに掻き立てる
─ 日本なら,いくらもらえば人を殺せるか
─ 命の値段
─ 重体と脂肪の境目
─ 残業するぐらいなら「殺してやる」
第3章 スラムという現実
─ スラムは安全で住みやすい
─ スラムのルール「富の再分配」
─ 贅沢をした男が受けた”処罰”
─ 「1回50ドル」スラム街ツアーの裏側
─ 震災の被災者像と同じ「フィルター」
─ 自分が見たいように見る
第4章 裏社会の掟
─ スラムと裏社会は同じではない
─ 裏社会ルール①縄張り
─ 「縄張りをでないの?」と聞いてみた
─ 裏社会ルール②ボスへの忠誠
─ 裏社会ルール③アンチの警察
第5章 本当は危ないセックス
─ 売春を取材する理由
─ シリア難民が集まった場所
─ バルカン半島のスラム街にいた悲しい夫婦
─ 牛用ステロイドと売春婦
─ 美しいことは金を生む才能
─ 東アジア最大の売春街の成れの果て
─ 性におおらかな国,ブラジル
第6章 世界は麻薬でまわっている
─ 破滅を恐れぬドラッグユーザー
─ ドラッグ愛好家の「線引き」
─ 痛み止め薬が中毒者を生んだ
─ ポートランドの実態
─ 日本の大麻合法化の可能性
─ 「処刑人」大統領
─ 刑務所に逃げ込む売人
第7章 なくならない非合法ビジネス
─ 観光スポットで話しかけてくる人は怪しい
─ なぜロマの犯罪が減らないか
─ 価値観は簡単に変えられない
─ 運び屋のリクルート思考
─ マフィアと麻薬カルテルは取材困難
─ メキシコ取材での最大の危機
─ 東欧の武器商人に潜入取材
─ 裏社会と警察
第8章 自分探しと自己実現の果て
─ ベガスとニューヨークの地下住人
─ ニューヨークの孤独
─ 自分探しへの警鐘
─ インドで知らされた日本人の死
─ 私がリスクを冒すのは
─ 日本人に勧める目的地
最終章 危ない思想は毒か薬か
─ 人を殺すのは思想である
─ 許されざる者
─ おわりに

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仲嶺真
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