反省させると犯罪者になります

#06 反省させると犯罪者になります

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岡本茂樹(2013). 反省させると犯罪者になります 新潮社

本書紹介 from 新潮社

犯罪者に反省させるな──。「そんなバカな」と思うだろう。しかし、犯罪者に即時に「反省」を求めると、彼らは「世間向けの偽善」ばかりを身に付けてしまう。犯罪者を本当に反省に導くのならば、まずは「被害者の心情を考えさせない」「反省は求めない」「加害者の視点で考えさせる」方が、実はずっと効果的なのである。「厳罰主義」の視点では欠落している「不都合な真実」を、更生の現場の豊富な実例とともに語る。

本書概要

著者の主張は一貫しています。その主張は大きく2つです。

・抑圧すると爆発する
・問題行動が起きた時がこれまでを振り返るチャンスである

「抑圧すると爆発する」というのはどういうことかというと,「自分の中にある否定的な感情を発散せず我慢していると,いつか犯罪や自死などの行動として最悪な形で現れる」ということです。

生きていく中で人は否定的な感情を抱えます。それをうまく発散できれば大きな問題は起こりませんが,うまく発散できず溜め込んでいると後に問題行動として現れます。犯罪者も同じで,自分の中にある否定的な感情を抑圧してきた結果,犯罪を犯してしまったと考えることができます。なので,まずは,その否定的な感情を発散させることが改善への一歩なのです。

しかし,「悪いことをしたのだから反省しろ」と反省文を書かせたり,被害者の心情を考えさせたりすることは,否定的な感情を発散させるどころか,さらなる感情の抑圧へとつながります。たとえば,犯罪者にも犯罪を犯した犯罪者なりの理由があるわけなので(それが良いか悪いかはとりあえず置いておく),まずはその感情を発散させる必要があります。しかし反省文を書かせることは,その理由を発散させることにはならず,思ってもいないこと(たとえば,私の心の弱さが犯罪へとつながってしまいました。反省しています。など)を書かせるだけになり,結果として本当の気持ち=感情は抑圧されることになります。その結果,犯罪者は反省することなく,また同じ過ちを繰り返す可能性が高くなってしまいます。

ですので,犯罪や自死などの行動が起きないようにするためには,自分の中の否定的な感情を発散させる必要があるわけです。そして,自己の否定的な感情を発散させる,つまり自己理解が深まっていくと,結果として他者理解も深まっていきます。なぜなのかはここでは詳しく書きませんので,本書をご覧いただきたく思います。

2つ目の主張は支援者の立場からのものです。自己の否定的な感情を抑圧してきた結果,犯罪や自死が起きるわけなので,支援者からみると,そのような問題行動が起きたときは逆に言えば,何が問題行動の原因となっているのかを探り,それを解消するきっかけになるわけです。ですので,支援者には,問題行動が起きたときに闇雲に反省させるのではなく,その行動の原因を一緒に探っていくという姿勢が求められます。

このように本書では,「抑圧すると爆発する」「問題行動が起きた時がこれまでを振り返るチャンスである」という主張を論拠に,現代の「更生」の在り方を批判していきます。筆者の考えが豊富な事例をもとに展開されますので,説得的な内容になっています。

本書は犯罪者の更生についての話が主ですが,「教育」に携わる人にとって示唆に富むことが豊富にあります。たとえば,「自分のなかに,正しいと思って刷り込まれた価値観が多ければ多いほど,他者に対して「許せない部分」が増えていきます。」(p.158)という一文は,子育て,特にしつけを考える上で重要な指摘かなと感じました。

「教育」あるいは「支援」を考える際にこれまでの価値観を相対化する上で役立つかなと思います。
(ただし,問題行動の原因を親に帰属しがちな部分はちょっと気になりました)

(以上はInstagramの再掲)

ページ数から見る著者の力点

本章は5章から構成されていました。各章のページ数は以下の通りです。

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