良質な質的研究のための,かなり挑発的でとても実践的な本
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デイヴィッド・シルヴァーマン 渡辺忠温(訳)(2020).良質な質的研究のための,かなり挑発的でとても実践的な本──有益な問い,効果的なデータ収集と分析,研究で重要なこと── 新曜社
本書紹介 from 新曜社
なぜ調査の方法が重要なのか。質的研究の基底にある論理とはどのようなものか。将来的な方向の鍵となる議論は何か。多くのテキストが表面的にしか扱わざるをえなかった調査研究についての実践的な事例とデータ分析の実際の経験を惜しみなく提示。
*目次*
謝 辞
第二版への序
はじめに─この本のための居場所づくり
なぜ調査方法があなたにとって重要なのか?
なぜ調査方法が私にとって重要なのか?
本書の構成
1 無数の計りしれない習慣─なぜ平凡なことが重要なのか
写真を眺めて
ありふれたものの中の特筆すべきもの
特筆すべきことがらの中のありふれたこと
インターネット時代のエスノグラフィー
現代文化からくる四つの欲求に打ち勝つ
細部をめぐるサックスの議論
路上のスピード
路上の犯罪を観察する
ありふれたものへの回帰
まとめ
2 質的データを見出し、制作することについて
重要な四つのポイント
なぜ自然発生的な素材は特別なのか
議論の持ついくつかの限界─制作されたデータは、 なぜ決して完全には立入禁止でないのか
今後の展望
結びの言葉
3 出来事か、シークエンスか
シークエンスの組織化についてのサックスの議論
シークエンスの組織化についてのソシュールの議論
ポジティブ・シンキング
HIV検査カウンセリングの音声テープの分析
二つの口蓋裂クリニック
「本当に?」
まとめ─質的研究が果たす役割
4 質的調査を応用する
より広い文脈
組織的な行動とテクノロジー
実践家−クライエントのやりとり
数字で質的研究を書く
結びの言葉
5 質的調査の美学─ブルシットと扁桃腺
経験と「リアルであること」との文化的恋愛
ポストモダンな世界?
ポストモダンな研究?
ブルシットについて
質的研究のための、アンチ・ブルシットな行動計画
責任感と真実─ファニア・パスカルの扁桃腺
結びの言葉
6 とても短いまとめ
訳者あとがき 195
紋切型用語集 199
文 献 205
人名索引 213
事項索引 215
本書感想
原著の出版が2013年。本書で提案された議題のいくつかは,議論の俎上にあがっている気もするけれども,まだまだ未検討・未解決な部分も多い。
ところで,私は「質的研究」の専門的な教育を受けてきたわけではなく,独学で質的研究を学んでいる。なので,質的研究界隈の現状というのが肌身を持ってわからない部分が多い。そういった現状をわかった方が本書を深く読み解けるだろうと思ったので,やはり専門的な教育というのは重要なのだなあと思う。
ページ数から見る著者の力点
本書は6章から構成されています(はじめにを含めると7つのセクション)。各章のページ数は以下の通りです。
最多ページ数は「4 質的調査を応用する」でした。質的調査は何の役に立つのか?という疑問に対して回答するとともに,一般的に相反すると考えられている量的研究とも相性が良いことを示す章でした。現に存在する質的研究への誤解は「良い」質的研究にはあてはまらないことを説得的に議論しており,おそらく幅広い読者が関心のある章なので,ページ数が多く割かれていたのかもしれません。
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